死と再生(読み)しとさいせい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「死と再生」の意味・わかりやすい解説

死と再生
しとさいせい

擬死再生ともいう。儀礼的,象徴的な死とそれに続く誕生 (再生) のこと。世界各地の諸民族の大部分にみられる通過儀礼において顕著な特徴である。ある社会的地位や位置,集団から,別の社会的なそれへと移行する際,その移行が円滑に行われるために,移行する人は一定期間社会から,すなわち帰属すべき双方の集団や状態から隔離される。これを一時的な「社会的死」の状態とみることができる。この期間は,いままで属していた集団に必要であった諸属性やパーソナリティを破棄し,これから加入する新しい状態に必要な諸属性やパーソナリティを修得するための準備の期間である。したがって儀礼中にみられる象徴的な死と再生のモチーフは,古い社会的人格としての「死」と新しい人格としての「誕生」を示したものと考えられる。儀礼期間中の特徴として,無秩序 (カオス) 的,非社会的あるいは曖昧な性格が現れることがよく知られている。こうした「死と再生」の観念は,成人式や結婚式などに顕著にみられる。山岳宗教である修験道峰入修行も,「母胎回帰」すなわち象徴的な「死」と象徴的な「再生」の観念に支えられた仏の胎内での修行であるとされている。

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