死の舞踏(ストリンドベリの戯曲)(読み)しのぶとう(英語表記)Dödsdansen

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

死の舞踏(ストリンドベリの戯曲)
しのぶとう
Dödsdansen

スウェーデンの作家ストリンドベリ戯曲。2部7幕。1901年刊。第1部は灰色の塔の中。世間ではこの塔のある島を「小さな地獄」とよんでいる。要塞(ようさい)砲兵大尉エドガールは妻の元女優アリセ(ストリンドベリの最初の妻シリ・フォンエッセンがモデルといわれる)と憎しみ合い、別れる機会をうかがいながら25年を過ごしている。我欲のかたまりで、冷血漢のエドガールは、訪ねてきた検疫所長クルトに怪しげなソーダ会社の株を押し付けたり、彼の息子アランを思いのままに操りながら、2人を物心両面でさいなむ。第2部はうって変わって明るい白色、金色の広間。アランとエドガールの娘ユーディットのあどけない恋の場面もある。現世的な物欲の面では満ち足りたかにみえるエドガールは心臓発作で倒れ、聖書の一句をつぶやきながら死ぬ。アリセの「亡き人の上に平安を」のことばで幕を閉じる。ストリンドベリの忍従、宗教的諦念(ていねん)への新しい境地、象徴的手法を示す戯曲の一つとして注目される。

[田中三千夫]

『山本有三訳『死の舞踏』(創元文庫)』

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