日本大百科全書(ニッポニカ) 「毒見」の意味・わかりやすい解説
毒見
どくみ
飲食物を他人に供する場合に、まず自ら飲食して毒物が混じっていない証(あかし)をすること。毒味とも書く。饗応(きょうおう)のマナーの一つで、大正時代までは酒席などにこの風習が残っていた。江戸幕府には将軍の側近に毒見役が設けられていたが、他の大名家でも近習(きんじゅう)の者が毒見をした例が多い。奥州仙台藩伊達(だて)家の家督相続事件を扱った芝居『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』の中で、乳人(めのと)政岡(まさおか)が幼君亀千代(かめちよ)を守ってわが子千松(せんまつ)に毒見をさせた話は広く知られる。中国やヨーロッパでも国王や領主に毒見役が置かれたが、日本では宮中に天皇の献立を侍医が味見する試饌(おしつけ)という毒見類似のしきたりがある。料理の味加減をみることも毒見という。
[佐藤農人]