毒味(読み)ドクミ

デジタル大辞泉 「毒味」の意味・読み・例文・類語

どく‐み【毒味/毒見】

[名](スル)
飲食物を人に進める前に飲食してみて、毒物有無を確かめること。「―役」
料理味加減をみること。「―して塩を少し足す」
[補説]「味」は当て字
[類語]試食味見試飲

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「毒味」の意味・読み・例文・類語

どく‐み【毒味・毒見】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「味」はあて字 )
  2. 食物を人に勧める前に飲食して、毒の有無を確認すること。
    1. [初出の実例]「イヤ、その儀は苦しうござらん。前見毒味(ドクミ)といふ事もござる」(出典:歌舞伎・毛抜(1742))
  3. 料理の味加減をみること。
    1. [初出の実例]「くふ人や毒味をこのむふぐと汁〈重規〉」(出典:俳諧・桜川(1674)冬二)

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改訂新版 世界大百科事典 「毒味」の意味・わかりやすい解説

毒味 (どくみ)

飲食物を進める際,それが無毒,無害であることを証するために行う試飲,試食。また,味かげんの良否を試すことをもいう。〈毒見〉とも書く。古今東西毒殺の例はきわめて多く,それを未然に防ぐために行われた。令制下の日本では,宮内省内膳司の長官である奉膳が,天皇の食事の毒味をすることになっていた。また,元日の屠蘇とそ)を進めるにあたっては未婚の少女の中から選ばれた薬子(くすりこ)/(くすこ)が試飲の役にあたった。中世には武家にもこの風がとり入れられ,試飲,試食を〈鬼〉〈鬼食い〉〈鬼飲み〉といい,それを行うことを〈鬼をする〉と呼んだ。《今川大双紙》には,貴人の前で飯の鬼をする場合,飯わんのふたをとり,盛られた飯の上の部分ではなく,左側をとるものだという作法が説かれている。加藤清正急死が毒まんじゅうによるものとする俗説が流布しているように,動乱期に毒殺はつきものであり,大坂夏の陣に参戦した伊達政宗は,家康に食物の毒味の必要を献言し,以来譜代の家臣がその役にあたったという。毒味を鬼と呼ぶ理由ははっきりしないが,伊勢貞丈は〈鬼はおそろしくつよき物にて毒をも何とも思はずとりくらふ心にて,毒の試みするをおにのみといふ〉としている。これに対して小山田与清(おやまだともきよ)は,毒味を鬼と呼ぶのは仏語の〈散飯(さば)〉から出たものだとする。散飯は,食事の初めに少量を取りわけて,鬼子母や曠野の鬼神などに供えるものとされる。つまり食物の初穂は鬼神に与えられるものであり,毒味は〈鬼神に代て初味を甞(なむ)る〉ことだから鬼というのだとしている。しかし,上記の《今川大双紙》には〈貴人の御前にて飯の鬼をする事〉とは無関係に〈さんばの事〉として,散飯は亡霊への手向けであろうとしており,毒味が散飯の風習に発するものとはいい難いようである。
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