日本大百科全書(ニッポニカ) 「氏族外婚」の意味・わかりやすい解説
氏族外婚
しぞくがいこん
clan exogamy
同じ集団に属する男女の結婚を禁止する規則を外婚規制とよび、外婚規制が適用される最大の集団を外婚単位という。人々が氏族にグループ分けされているような社会の多くでは、氏族がこうした外婚単位となっていることが普通である。これを氏族外婚という。
婚姻の禁止は、氏族外婚に尽きるとは限らない。たとえば、アフリカのヌエルの人々の間では、男は自分と同じ氏族の女性とは結婚できないが、この規則以外にも、母親の属していた最大リネージの女性との結婚を禁じたり、同じ年齢組の男の娘との結婚を禁じるなどの規則がある。こういった規則のもつ一つの効果は、氏族ができるだけ多くの他の集団と、婚姻を通じて関係を結ぶことになるということである。一般に、外婚規制のもとでは、氏族はその存続を、配偶者を提供してくれる他の諸集団の存在に依存することになる。
氏族の多くは外婚的であるが、すべての氏族に外婚規制がみられるわけではない。たとえば、アラブのベドウィンの氏族は、外婚規制をもたず、実際、父方平行いとこ婚を好んで行っている。また、全部族が単一氏族を形づくっているアフリカのソマリにおいても氏族外婚は不可能な制度である。
[濱本 満]