ベドウィン(読み)べどうぃん(英語表記)Bedouin

翻訳|Bedouin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベドウィン」の意味・わかりやすい解説

ベドウィン
べどうぃん
Bedouin

アラビア半島を中心に、中近東、北アフリカの砂漠・半砂漠一帯に住むアラブ遊牧民。ただしベドウィンということばは、正確なアラビア語ではない。バダウィ(単数女性形はバダウィヤ)の集合名詞バドゥまたは口語複数形バダウィーンというアラビア語を、ヨーロッパ人が訛(なま)って発音したのが始まりだといわれている。

 ベドウィンとアラブが、元来、同義語であったことは、さまざまな史料から証明されている。アラブということばが最初に現れた紀元前853年ごろのアッシリアの碑文では、それはアラビア半島北部に住むベドウィンのことであった。南アラビアの古代碑文やコーランに出てくる「アラブ」もベドウィンのことをさしている。

 アラビア語のバドゥは、バーディヤ(砂漠性の荒野、町ではない所)に住む人たちという意味であり、彼らが移動しているか、定住しているか、あるいは一時的に定住しているかは問題ではない。したがって、ベドウィンを「遊牧民」と訳すのは誤訳とはいえないまでも正しい訳ではない。バドゥに対することばとしてハダリ(町に住む人たち)がある。しかしハダリも、もとはバドゥだった者がほとんどであり、両者の間には連続性、可逆性がみられる。

 一般に社会組織は、氏族部族から拡大家族に至るまで、父系の分節構造をもち、なかでももっとも重要な単位は拡大家族である。

 ラクダを中心とした遊牧がベドウィンの伝統的な生業形態であるが、砂漠の奥に住む彼らの生活も、近年は商品経済の波に洗われ、トラックなどがラクダにとってかわりつつあり、ベドウィンの生活も変容してきている。

 一方、サウジアラビアをはじめ、どのアラブ諸国でもベドウィン定着化の政策がとられており、ベドウィンの絶対数は急速に減少してきているのが現状である。

[片倉もとこ]

『片倉もとこ著『アラビア・ノート』(NHKブックス)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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