日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソマリ」の意味・わかりやすい解説
ソマリ
そまり
Somali
「アフリカの角(つの)」ともよばれるソマリ半島、ジブチからソマリア、エチオピア、ケニアのタナ川北岸まで居住するクシート系遊牧民。人口は200万人とも400万人ともいわれるが、そのうちソマリア領内には約4分の3が居住する。一説にはすでに7世紀からイスラム教徒となっていたという。ソマリという総称のもとに多くの下位グループが含まれ、身体的にも言語的にも大きな差異がみられる。大部分は、9世紀から13世紀にかけアラビア半島からきた首長のもとで改宗し、これがイサク、ダロッドとよばれるグループになったといわれている。さらに移住混血のなかで南部のハミイエ、ラハンウェインのグループが生まれた。生業の中心はラクダ(ヒツジ、ヤギ、それにウシを飼うこともある)の遊牧であり、その中心となる少年(7歳くらいから牧夫となる)にとっては、ラクダの世話、不寝番、150キロメートル以上も離れた井戸との往復という厳しい生活である。巡回コーラン学校で学べるのは富裕な家族の子供だけである。父系をたどる親族関係は子供の記憶にしっかりとたたき込まれ、牧草地と井戸の融通は父系親族の網の目を通じて行われる。族外婚が行われ、男は複数の妻をもてるが、離婚率は高い。処女性が尊ばれ、少女には割礼(かつれい)が行われる。
全体人口の8分の1ほどがジュバ川下流の比較的肥沃(ひよく)な土地に500年ほど前から定着し農耕民となり、サブとよばれている。誇り高い遊牧ソマリは、サブを軽蔑(けいべつ)の対象としている。ソマリアは1977年から、エチオピアとオガデン戦争を起こし、オガデン地方のソマリ人(とりわけダロッド)の多くが難民となり、88年の戦争終結後も多くがケニアに残り厳しい生活を強いられている。
[渡辺公三]