日本大百科全書(ニッポニカ) 「民衆派」の意味・わかりやすい解説
民衆派
みんしゅうは
populares ラテン語
共和政末期のローマ支配層内で、旧来の貴族寡頭政的支配体制と元老院中心の政治運営に、ポプルスpopulusの自由擁護の立場から反対したグループ。ポプラレスともいう。原点は、グラックス兄弟の改革(前133~前121)に求められる。第三次ポエニ戦争(前149~前146)以降、ノビレスnobiles(顕職貴族)中心の支配構造の矛盾が顕在化し、大土地所有の展開と市民団の中核たる中小土地所有者層の没落が進むなかで、民衆派政治家は、公有地占有制限による大土地所有抑制、公有地分配、植民市建設による没落市民救済=市民団再建などを目標に掲げ、護民官職と平民会決議を武器に、ローマ市無産民衆や騎士身分を味方につけながら改革を試みた。この潮流の頂点は、平民出身のマリウスの政権掌握であるが、同盟市戦争とマリウスの没落のころ(前80年代)を境に、民衆派に対抗する閥族派政治家のなかにも民衆派的政治手法(植民、無産市民への穀物分配など)を駆使する者が現れた。
[栗田伸子]