改訂新版 世界大百科事典 「水系伝染病」の意味・わかりやすい解説
水系伝染病 (すいけいでんせんびょう)
water borne infection
病原微生物を含んだ排出物や分泌物が,なんらかの原因で便池や下水から飲料に供する河川水や井戸水などに混入し,その水を介し,経口的に感染したり,水中の病原微生物が皮膚を通して感染する病気を水系伝染病という。上水道が完備しなかった時代には,河川水を飲用に供し,上流にたとえば赤痢患者が発生すると,その河川に沿って下流に赤痢患者がしばしば発生した。腸チフス,パラチフス,細菌性赤痢,アメーバ赤痢,ポリオなどが水を介し経口的に感染する。日本住血吸虫症は,水田の水にカタヤマガイからぬけ出した日本住血吸虫の幼虫が田植えや田の草とりなどに入ったヒトの皮膚から侵入して感染をおこす。また黄疸出血性レプトスピラ症は,レプトスピラ属のスピロヘータを含むネズミの尿が下水や水田,沼などに排出され,その水の中でスピロヘータが増殖し,そこへ入って来たヒトの皮膚からスピロヘータが侵入し,感染をおこす。
執筆者:藤森 一平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報