アメーバ赤痢(読み)アメーバセキリ(その他表記)Amebic dysentery

デジタル大辞泉 「アメーバ赤痢」の意味・読み・例文・類語

アメーバ‐せきり【アメーバ赤痢】

赤痢アメーバ経口感染によって大腸潰瘍かいようができ、粘血便の下痢腹痛などが起こる病気。しばしば慢性化し、再発を繰り返す傾向がある。

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精選版 日本国語大辞典 「アメーバ赤痢」の意味・読み・例文・類語

アメーバ‐せきり【アメーバ赤痢】

  1. 〘 名詞 〙 [ 異表記 ] アミーバせきり 赤痢アメーバ病原体とする赤痢の一種。一日数十回にも及ぶ下痢を起こし、慢性で再発しやすい。法定伝染病の一つに定められていたが、平成一一年(一九九九)の伝染病予防法に代わる感染症法の施行に伴い、四類感染症に分類された。

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六訂版 家庭医学大全科 「アメーバ赤痢」の解説

アメーバ赤痢
アメーバせきり
Amebic dysentery
(感染症)

どんな感染症か

 赤痢アメーバという原虫による大腸の感染症で、世界で年間約5千万人の感染者、4~10万人の死亡者がいると推定されています。赤痢アメーバの嚢子(のうし)に汚染された飲食物を口からとることで感染します。急性期の患者さんよりも嚢子を排出する無症候性の感染者が感染源として重要です。

 ほかの寄生虫感染症に比べ、日本でも多くの感染が発症しているので注意が必要です。年間700~800人の届け出があり、4~5年前と比較すると約1.7倍増加しています。死亡例は年間数例です。感染した人の8~9割は海外渡航歴がなく、ほとんどの場合が男性同性愛者または知的障害者です。国内では食中毒として発生するケースはほとんどありません。

症状の現れ方

 感染しても症状が現れるのは5~10%程度です。粘血便、下痢、しぶり腹、鼓腸(こちょう)、排便時の下腹部痛などの赤痢症状を示します。典型的なケースではイチゴゼリー状の粘血便を排泄し、数日から数週間の間隔で増悪(ぞうあく)寛解(かんかい)を繰り返します。

 増悪時は腸穿孔(せんこう)(あな)があく)を起こしたり、腹膜炎を起こすこともあります。また、大腸炎症状を起こす患者さんのうち約5%で腸管外への播種(はしゅ)(病原体がばらまかれる)がみられます。肝臓・肺・脳などで膿瘍(のうよう)を形成し、重い症状を示します。このうち肝膿瘍が最も高い頻度でみられます。

検査と診断

 糞便中あるいは膿瘍液中の赤痢アメーバ原虫を顕微鏡で確認することで診断がつきます。

 同時に、赤痢アメーバの主要抗原蛋白質を免疫酵素抗体法で検出したり、赤痢アメーバのDNAPCR法で増幅することにより、直接赤痢アメーバの存在を証明する方法が最も確実です。

 また、患者さんの血液のなかに赤痢アメーバに対する抗体があるかどうかを調べる方法も一般的で、専門の研究・検査機関に一般の病院・医院からでも依頼検査ができます。

治療の方法

 メトロニダゾール(フラジール)、チニダゾールの経口投与が一般に有効です。重症の患者さんにはデヒドロエメチンの静脈注射も行われます。嚢子保有者にはメトロニダゾールのほかにフロ酸ジロキサニドが用いられ、有効な場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 腸炎の症状を示す場合は細菌性の赤痢潰瘍性大腸炎クローン病などと間違われることがあります。アメーバ赤痢は一般に全身状態がよく、増悪・寛解を繰り返すことがよくあります。腸穿孔、腸管外播種などになると命に関わるので、症状に気づいたら内科・感染症科などを受診する必要があります。

野崎 智義

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家庭医学館 「アメーバ赤痢」の解説

あめーばせきり【アメーバ赤痢】

[どんな病気か]
 赤痢アメーバという原虫(げんちゅう)が感染しておこる赤痢で、感染症予防法の5類感染症に指定されています。
 世界各地でみられますが、とくに、熱帯亜熱帯に多くみられる病気です。日本では、まれな病気ですが、海外旅行へ行った人がもち帰った輸入感染症や性感染症として、ときどき発見されます。
 赤痢アメーバは、下痢便(げりべん)の中から約30μm(マイクロメートル)(1μmは、1000分の1mm)の栄養型として見つかりますが、固形便の中からも抵抗性の強い嚢子(のうし)として検出されます。
 感染は、赤痢アメーバの混入した水を飲んでおこることが多いのですが、下肥(しもごえ)で育てた野菜、ハエやゴキブリが運んだ嚢子の混入した食物や、嚢子の保有者が調理した飲食物の摂取などでもおこります。
 同性愛者のアナルセックスで、性感染症としておこることもあります。
[症状]
 感染しても無症状のままのこともありますが、ふつうは、粘液(ねんえき)・血液のまじった下痢便が1日数回から二十数回おこり、下腹部が痛みます。発病して2~3日は軽く発熱しますが、その後は解熱します。
 体重が減少し、貧血がおこります。ひどい場合は、肝臓(かんぞう)や肺に膿瘍(のうよう)ができます。
 細菌性赤痢やカンピロバクター食中毒との鑑別が必要です。消化器内科を受診しましょう。便の顕微鏡検査で赤痢アメーバが証明されれば、診断は確定します。
[治療]
 栄養型のアメーバが検出された場合は、メトロニダゾール系の薬の内服がよく効きます。
 肝臓に膿瘍ができた場合は、外科的な治療が必要になることもあります。
[予防]
 海外旅行などで流行地に滞在するときは、生水(なまみず)を飲むのを避け、飲食物は、加熱したものを食べるようにしましょう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメーバ赤痢」の意味・わかりやすい解説

アメーバ赤痢
アメーバせきり
amoebic dysentery

原虫の一種である赤痢アメーバの経口感染によって発病する大腸の潰瘍性炎症。細菌性赤痢に対するもの。急激に発熱し,特有のイチゴゼリー状の粘血便を 1日数回ないし十数回排便する。腹痛が激しく,数日のうちに死にいたる急性型と,緩慢に発病して下痢と腹痛を繰り返し,回復したかと思うとまた再発する慢性型とがある。細菌性赤痢との確実な鑑別診断は,検便によって赤痢アメーバを検出すること。肝膿瘍を併発することがある。治療薬としては塩酸エメチンが使われてきたが,テトラサイクリン系抗生物質も有効である。

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百科事典マイペディア 「アメーバ赤痢」の意味・わかりやすい解説

アメーバ赤痢【アメーバせきり】

赤痢アメーバの経口伝染による腸アメーバ症で赤痢症状を示すもの。熱帯に多いが温帯にも分布。普通ゆるやかに発病し一般に熱もないが,やがて大腸,直腸に潰瘍(かいよう)を生じ,1日数回〜十数回の下痢をする。便は典型的にはゼリー状粘血便。治療にはメトロニダゾールなどを投与する。服用困難な場合は,エメチン筋注。治療しないと慢性化し再発を繰り返す。→赤痢
→関連項目トコン

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改訂新版 世界大百科事典 「アメーバ赤痢」の意味・わかりやすい解説

アメーバ赤痢 (アメーバせきり)

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栄養・生化学辞典 「アメーバ赤痢」の解説

アメーバ赤痢

 ⇒アメーバ症

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世界大百科事典(旧版)内のアメーバ赤痢の言及

【赤痢】より

…赤痢とは発熱,下腹部痛,粘液・血液を混じた頻回の下痢,しぶりばらtenesmus(裏急後重)を主要症状とする法定伝染病で,主として大腸粘膜の潰瘍性炎症を伴う腸管感染症である。その病原体によって細菌性赤痢とアメーバ赤痢に分類される。
[細菌性赤痢bacillary dysentery]
 病原体である赤痢菌は1897年志賀潔によって発見され,志賀の名にちなんでShigellaという属名がつけられた。…

※「アメーバ赤痢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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