カタヤマガイ(読み)かたやまがい(英語表記)Japanese blood fluke intermediate host snail

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カタヤマガイ」の意味・わかりやすい解説

カタヤマガイ
かたやまがい / 片山貝
Japanese blood fluke intermediate host snail
[学] Oncomelania nosophora

軟体動物門腹足綱イツマデガイ科の巻き貝。半淡水性の小形種で、殻高7ミリメートル、殻径2.5ミリメートル内外、高円錐(えんすい)形で螺層(らそう)は8階、殻表は黄褐色半透明光沢がある。日本住血吸虫中間宿主で、この吸虫による疾患が広島県福山市中央部東側の小高い丘である片山(かたやま)付近の風土病として最初に知られたところから、カタヤマガイの名がついた。また、日本住血吸虫の発育過程の一時期であるセルカリアがこの貝を中間宿主として利用することを発見した宮入慶之助を記念してミヤイリガイともよばれる。この貝の駆除には石灰を散布したり、田溝をコンクリートにするなどの努力が払われているが根絶に至っておらず、上記の福山付近のほか、福岡県久留米(くるめ)地方や山梨県などに分布している。

 本種の属するカタヤマガイ属は日本のほか、中国の揚子江(ようすこう)流域や台湾、フィリピンなどにも分布しており、それらの地方にも日本住血吸虫の患者があり、その数はおよそ4600万人に達するという。第二次世界大戦中フィリピンのレイテ島に上陸したアメリカ軍が水浴して約2000人の患者を出したのが契機となって、本類の分類生活史などの生物学的研究が一段と詳しくわかるようになった。

[奥谷喬司]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カタヤマガイ」の意味・わかりやすい解説

カタヤマガイ
Oncomelania hupensis nosophora; Japanese blood fluke intermediate host snail

軟体動物門腹足綱イツマデガイ科。殻高 0.7cm,殻径 0.25cm内外。殻は高円錐形で堅固。螺層は8階。殻表は栗褐色,平滑で光沢がある。殻口は卵形で,外縁は多少厚くなる。日本住血吸虫の中間宿主で,田植えの頃,吸虫のケルカリア水中に泳ぎ出て浮いているとき素足で水中に入ると,皮膚から体内に侵入して日本住血吸虫症を引き起こす。広島県福山市北東部の旧神辺町片山付近にこの貝が多くすんでいたのでその名がついた。また,本種が日本住血吸虫の中間宿主となることを宮入慶之助が発見したことからミヤイリガイともいう。駆除は石灰散布や,田溝をコンクリートで張るなどの改修による。かつて山梨,広島,佐賀,福岡などの田の溝や小川にすんでいたが,駆除対策により現在では山梨と千葉の一部に少数が生息するにすぎない。また,日本住血吸虫症の患者も出ていない。この種の亜種は中国のチャン江 (揚子江) 流域,台湾,フィリピン,インドネシアのスラウェシ島などにも分布し,同様に住血吸虫の中間宿主となっている。

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