日本歴史地名大系 「江戸総絵図」の解説
江戸総絵図
えどそうえず
一二〇×一四〇センチ前後(広げた大きさは不定形) 稿本 元禄年間(九年説あり) 東京都公文書館蔵
解説 面積を拡大した江戸市街はその地図も大きさを必要とするようになり、また精細さを加えると紙面も巨大化せざるを得ず、折畳んで保存することになる。和紙はその折畳みの繰返しを可能にする材質をもち、畳は大きく広げて利用するのに適した閲覧条件を作った。しかしそれでも、閲覧翻読には図面をいくつかに分割して作製・利用を便利にすることになるが、どのように分割するのが合理的か工夫が続けられることになる。本図は全体を分けるために、不定形になるのもいとわず地形の連続を保つように、道路や堀川の線で描画する曲線のままに紙面をも切断したものである。九枚で全域をカバーし、「御本城」と「西之御丸」を中心に堀線で裁たれた一枚とその周囲のそれぞれ不定形の八枚である。公文書館には本図以降に宝暦年中とされる三七枚分割図、寛政年中とされる三九枚分割図が所蔵され、さらに江東区深川江戸資料館などには、セットの一部と思われる天明年間深川切絵図などが保管されている(「考証江戸切絵図」など)。それぞれに、分割図の成立発達史に興味深い示唆を与える。このほか切絵図の発生発達とは無関係としても、二〇枚(平均七七×一五一センチ、安政年間か)に分けられた「御府内備考」付図(国立国会図書館・東京都公文書館蔵)、四三枚(天保元年―文久二年)の「御府内往還(場末)其外沿革図書」総図(同館蔵)など、大型の稿本・写図については今後の研究に資せられることが予想される。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報