沢氏(読み)さわうじ

改訂新版 世界大百科事典 「沢氏」の意味・わかりやすい解説

沢氏 (さわうじ)

大和国宇陀郡沢に蟠踞(ばんきよ)した中世国人領主。その伝世した文書群は早く同氏の手を離れ,1888年島田直次郎から田中光顕に売却され,現在国立公文書館内閣文庫蔵。大半が室町~戦国期の文書である。沢氏は南北朝期から南軍として史料上に散見し,伊勢国司北畠氏与力,のちには被官として,その文書中に北畠氏およびその家臣の発給文書を大量に残している。北畠氏との関係は戦国末年の北畠氏の滅亡まで継続し,その間,伊勢に飯高(いいたか)郡神戸六郷,一志(いちし)郡小阿射賀(こあざか),多気(たき)郡御糸(みいと)などの分領を宛て行われ,軍役を奉仕している。

 その一方,本貫である大和宇陀郡では秋山氏,芳野氏等の有力国人とともに郡内一揆を結成し,北畠氏の権力すら容易に介入しえない自治区を創出した。郡内一揆に関しては,その文書中に宇太水分(みくまり)神社(現,宇陀市菟田野区古市場)の社頭で誓約した享禄5年(1532)6月29日付の郡掟等,重要史料を残している。近世には津藩主藤堂氏に仕えた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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