法曹一元(読み)ほうそういちげん

百科事典マイペディア 「法曹一元」の意味・わかりやすい解説

法曹一元【ほうそういちげん】

種々の意味で使われるが,現在では,裁判官として法曹生活に入った者だけが裁判官の職を占める,いわゆるキャリア・システムに対し,裁判官は原則的に法律職従事者,特に弁護士から選ばれるべきものとする考え方をいう場合が多い。英米では,この意味の法曹一元が徹底している。日本では,運用上は,現在おおむねキャリア・システムをとる(例外として最高裁判所にはほぼ5名の弁護士出身の裁判官がいるのが例となっている)が,裁判の迅速化などの要請契機にして,法曹一元の採用が論じられた。しかし臨時司法制度調査会は時期尚早との結論を出し(1964年),その後は打ち切られたかたちになっていたが,1999年内閣に設置された司法制度改革審議会では,裁判官の供給源多様化など,新たなかたちで再検討されている。→弁護士任官制判検交流

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世界大百科事典(旧版)内の法曹一元の言及

【英米法】より

…第4に,具体性を重んずる思考形態は,問題の法的処理において実際に有効な救済を与えうるか否かを重視する態度を生んでいる。また,司法の面でのおもな特徴としては,弁護士その他として法律実務を長年積んだ者の中から裁判官を選任するという法曹一元の制度,並びに,一般人の中から基本的には無作為抽出的な方法で選ばれた陪審員が,(軽微なものを除き)刑事事件と一部の民事事件において審理に加わり,事実認定を担当する陪審制を挙げることができる。 英米法という概念は,このような法文化的概念である。…

【裁判官】より

…日本の現行制度では,裁判官は公選制ではなく,任命制となっている。また,日本では,大多数の者が,法曹資格取得後他の法律職(検察官,弁護士等)に就くことなく,はじめから裁判官に任命され,その組織の中で養成され,順次昇進,昇給していくのが普通であり(キャリア・システム),他の法律職としての経験が豊富な者の中から,裁判官を任命するという法曹一元の理念は,実現されていない。諸外国で見られる,法律の専門家でない素人が,裁判官または参審員(参審制)として審理に直接関与する制度は,日本にはないし,陪審制も現在,実施されていない。…

【弁護士】より

…定義上ローマ法教授の機関であった大学法学部ではコモン・ローを教授することはできず,国王の裁判所で行われる法はコモン・ローであったから,大学はイギリスの弁護士の養成機関とはなりえなかったのであり,実定法であるコモン・ローを教授する能力は,実務法曹の長老以外には発見することができなかったのである。英米法諸国に今日も伝わっている,いわゆる法曹一元制度の歴史的起点はここにある。これらの弁護士階層が,その志望者とともに強固な団体を結集し,その団体がギルドとして組織化されたのは中世的文脈においては当然のことであった。…

【法曹】より

… 前述のように,第2次大戦後の日本においては,実務法曹の採用・養成制度こそ単一化されたものの,司法研修所の過程を終えれば,それぞれ判事,検事,弁護士という別個の職業に分かれ,それぞれの職業に伝統的に付着したエートスに同化していく傾向がある。英米法系の諸国のように,全員が弁護士になり,かなり長期の弁護士生活経験者のなかから裁判官を選任するという,いわゆる法曹一元の制度が望ましいという主張がある。戦前にも1938年にこのような法曹一元制度を骨子とする法案が衆議院を通過したことがあり,戦後の司法制度(とりわけ判事補制度)はこのような制度を前提として構成されているという有力な学説もある。…

【臨時司法制度調査会】より

…臨時司法制度調査会設置法(1962公布)により,1962年5月内閣に設けられた審議会で,法曹一元制度(弁護士など裁判官以外の法律関係職務に従事した者から裁判官を任命する制度)と裁判官,検察官の任用・給与制度を中心とした司法制度全般に関し,緊急に必要な基本的事項につき調査し,64年8月具体的な施策の提言を盛り込んだ意見書を提出した。会長は我妻栄。…

※「法曹一元」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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