流沙(読み)りゅうさ(その他表記)Liū shā

改訂新版 世界大百科事典 「流沙」の意味・わかりやすい解説

流沙 (りゅうさ)
Liū shā

中国,西北地区の沙(砂)漠地帯をさす。《書経》禹貢篇に〈弱水を導きて合黎に至り,余波,流沙に入る〉とあるが,この流沙は《水経》によれば,張掖ちようえき)郡の居延県の北東にあたるといい,今日の居延海付近の砂漠をさした。また新疆ウイグル(維吾爾)自治区のロブ・ノール以東,甘粛省の玉門関に至る間の砂漠地帯をもさす。タリム(塔里木)盆地の南,崑崙山脈の北麓を通ってパミールを越えて行くシルクロードの一つとして古くより交通の要衝地帯であった。強風が砂を吹きとばす流沙の恐ろしさは,《法顕伝》《大唐西域記》など数多くの文献に伝えられている。《西遊記》は,流砂河という大河であるとし,その主が沙悟浄(さごじよう)ということになっている。日本でも〈流砂といふ川〉(《平家物語》巻十〈高野御幸〉)と考えられており,〈彼河のひろき事,三百二十余町なり。水碧天にひたし,浪万天に溯(さかのぼ)り,速くして漲(みなぎ)れば,砂を洗ひ流せり〉(幸若舞曲《笛之巻》)などと,そのイメージは誇張されたものとなっていた。
天竺
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