デジタル大辞泉
「流」の意味・読み・例文・類語
りゅう〔リウ〕【流】
1 水などの流れ。
「杯を浮かめては―に牽かるる曲水の」〈謡・安宅〉
2 流儀。流派。また、系統。「柳生流」
「かたのごとくその―をこそ学び候へ」〈謡・関寺小町〉
3 仲間。手合い。連中。軽蔑の意を込めて用いた。
「皆あの―が、心中か女郎の衣裳を盗むか、ろくなことはでかさず」〈浄・冥途の飛脚〉
4 他の語の下に付いて、それ特有のやり方、それに似せたやり方であることを表す。「自己流」「西洋流」「彼流のやり方」
5 数詞、または上・中・下などの語の下に付いて、質や程度・段階などを表す。「一流の店」「中流」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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ながし【流】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「ながす(流)」の連用形の名詞化 )
- ① 流罪にすること。「島流し」
- ② 台所や井戸端などに設けた、ものを洗ったり、洗い水を流し捨てたりする場所。また、風呂場などでからだを洗う場所。
- [初出の実例]「向ふのながしに、かの年増らしいやつが、なにかあらってゐるから」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五)
- 「三助は空いた桶をがたんがたんと流しの一隅に片寄せて行った」(出典:生(1908)〈田山花袋〉一)
- ③ 風呂屋で入浴する人の背などをこすり洗うこと。また、その職業の人。流し男。さんすけ。
- [初出の実例]「ながしのをとこ留桶と小をけ二つへ、湯を汲でおき、せなかをながしに来たり」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- ④ かまわずに放っておくこと。
- [初出の実例]「『大文字屋のはどうなせんした』『ナアニあいらアずっとながしさ』」(出典:洒落本・深川新話(1779))
- ⑤ 「ながしいた(流板)」「ながしだい(流台)」の略。
- [初出の実例]「流板(ナカシ)を砂で磨(みがく)が能(いい)」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二)
- ⑥ 「ながしぎ(流木)」の略。
- [初出の実例]「ながしの椅はざう木よりはそんなり」(出典:浮世草子・立身大福帳(1703)六)
- ⑦ 「ながしえだ(流枝)」の略。
- [初出の実例]「まりはなはいけたるえだもなかしかな〈勝春〉」(出典:俳諧・新続犬筑波集(1660)一八)
- ⑧ 芸人、按摩(あんま)などが、三味線などを弾いたり、笛を鳴らしたりして、客を求めて歩き回ること。また、その人。芸人が往来を歩くときに演奏する特別な三味線の曲もいう。
- [初出の実例]「猿の面がある。そいつは流しの道具になりさうなものだが」(出典:歌舞伎・紋尽五人男(1825)四幕)
- 「新内の流しが通って行った」(出典:別れた妻に送る手紙(1910)〈近松秋江〉)
- ⑨ 「ながしにわか(流俄)」の略。
- [初出の実例]「流しと云は或は種々の扮を摸し或は平服にぼてかづらを着し一言の滑稽或は諧謔をなして行き過るを云」(出典:随筆・守貞漫稿(1837‐53)三二)
- ⑩ 客や対象を求めてあちこち移動すること。また、そのような人。
- [初出の実例]「彼の円タクは流(ナガ)しをやらない」(出典:白粉とガソリン(1930)〈川端康成〉一)
- 「ああいう流しの泥棒は苦手でしてネ」(出典:復員殺人事件(1949‐50)〈坂口安吾〉四)
- ⑪ 能楽および長唄で、大鼓・小鼓や太鼓を演奏する時の手法の一つ。同種の音を連続して打つ演奏をいう。
- [初出の実例]「大鼓の一せい、品々あるべし。第一、なかしは何の所ぞ」(出典:花伝髄脳記(1584頃)灌頂之巻)
- ⑫ =ぎんながし(銀流)①
- [初出の実例]「此かんざしは流しでおっす」(出典:咄本・無事志有意(1798)畳算)
- ⑬ 南風をいう。
- [初出の実例]「流し〈略〉つばなながし〈三四月の南風を云〉筍ながし〈四五月の南風を云〉是ら又すべてナガシとばかりも云」(出典:俚言集覧(1797頃))
ながれ【流】
- [ 1 ] ( 動詞「ながれる(流)」の連用形の名詞化 )
- ① 水などが自然に低い方へと移動すること。また、その状態やそのもの。流水や流勢。
- [初出の実例]「この川の 行(ながれ)の長く ありこせぬかも」(出典:万葉集(8C後)一〇・二〇九二)
- 「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」(出典:方丈記(1212))
- ② 杯に残る酒のしずく。→おながれ。
- [初出の実例]「今は、みすのうちより、ながれの御かはらけ給はらばや」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
- ③ 蝋など、とけて垂れ落ちるもの。
- [初出の実例]「蝋燭の流れや紙屑をただ遣るのは惜しい物だ」(出典:歌舞伎・浮世柄比翼稲妻(鞘当)(1823)二番目序幕)
- ④ 時の経過や物事の移り変わり。また、大勢の人が通りを往来するさまのたとえ。
- [初出の実例]「すべてを押し流す『時』の流も」(出典:毛利先生(1919)〈芥川龍之介〉)
- 「観音へ詣でる仲見世通の人の流れは」(出典:寝顔(1933)〈川端康成〉)
- ⑤ 血統や系統。また、技芸などの流儀・流派。
- [初出の実例]「小野の小町は、いにしへのそとほりひめの流なり」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
- ⑥ 質物をうけ出す期限が切れて所有権がなくなること。また、そうなった質物。
- [初出の実例]「ごみ吹はらひ跡はゆふだち からげ置質のなかれのさび刀〈友重〉」(出典:俳諧・寛永十三年熱田万句(1636)一八)
- ⑦ 流罪(るざい)になること。流刑(るけい)。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑧ あてもなくさすらうこと。定めない境遇。また、その者。特に、遊女や遊里をいう。「流れの者」「流れの身」
- [初出の実例]「惣じて流(ナガ)れのこと業禿立(かぶろだち)より見ならひわざとをしへる迄もなし」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)
- ⑨ 催し物・会合・計画などがとりやめになること。中止。
- [初出の実例]「親心の因果で、勘当の段は流(ナガレ)になり」(出典:滑稽本・古朽木(1780)一)
- ⑩ 胎児が死んで生まれること。流産。
- [初出の実例]「生流(ナガレ)胎内而死 百日」(出典:新羅社服忌令(1425))
- ⑪ 屋根の傾斜の度合。
- ⑫ 長く横に伸びているような地形。
- [初出の実例]「流とは山の尾、あるは、岨などのごとくよことふをいへり、なだれといふ詞にや」(出典:菅江真澄遊覧記(1784‐1809)楚堵賀浜風)
- ⑬ 歌舞伎の出語りなどで、山台や雛壇に居並ぶ演奏者のうち、中央の立唄・立三味線に対し左右の最末座にすわる者の称。
- [初出の実例]「尻目にて流へ渡すしん語り」(出典:雑俳・柳多留‐七二(1820))
- ⑭ 会合などを終えた人々の群れ。また、主たる会合に続く会。二次会。
- [初出の実例]「祝典宴会の流(ナガ)れらしい七八人の青年紳士が」(出典:物質の弾道(1929)〈岡田三郎〉)
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 旗・幟(のぼり)など、細長いものを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「にはかに旗を七ながれつくり」(出典:平家物語(13C前)六)
りゅうリウ【流】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 水などのながれ。
- [初出の実例]「面白や山水に、杯を浮かめては、流(りう)に牽かるる曲水の」(出典:謡曲・安宅(1516頃))
- [その他の文献]〔孟子‐梁恵王・下〕
- ② 芸能・学術・武術などで、その人、その家に特有の手法・様式、また、その手法・様式の系統。流儀。流派。人名、その他の語に付けて用いることもある。
- [初出の実例]「経信の流の啄木ををしへんずる也」(出典:古今著聞集(1254)一五)
- ③ 先祖から子孫へとつながる血縁。血統。血すじ。
- [初出の実例]「曾祖父か記録を伝得て尤も嫡家の流たり」(出典:教訓抄(1233)一)
- [その他の文献]〔北史‐白建伝〕
- ④ 同じなかま。連中(れんじゅう)。手合(てあい)。やから。軽侮の気持を含んで用いた。
- [初出の実例]「皆あのりうが、心中か女郎の衣装を盗むか、ろくな事は出かさず」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中)
- ⑤ =る(流)
- [ 2 ] 〘 造語要素 〙
- ① ( [ 一 ]②から転じて ) 一般的な語に付いて、そのやり方、それに似せた方式である意を表わす。
- [初出の実例]「賤も狂句をはけば、世人阿蘭陀流などさみして、かの万句の数にものぞかれぬ」(出典:俳諧・生玉万句(1673)序)
- [その他の文献]〔漢書‐芸文志〕
- ② 数詞、または上・中・下などの語に付いて、質や程度、段階などを表わす。「一流」「二流」「上流」「中流」など。〔世説新語‐品藻〕
る【流】
- 〘 名詞 〙 令制で五刑の一つ。都から離れた辺地に追放して終身帰さず、他に移ることを禁じ、監視させるもの。妻妾は同行させ、父祖子孫はその意に任せた。罪の軽重によって、伊豆・安房・常陸などに配流する遠流(おんる)、信濃・伊予などへの中流、越前・安芸などへの近流の三等があった。りゅう。→流罪。
- [初出の実例]「凡犯レ流応レ配者、三流倶役一年」(出典:律(718)名例)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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普及版 字通
「流」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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流
ながれ
磐井郡を三区分する呼称の一で、西磐井・東山とともに中世から用いられた。郡の南部、現花泉町と一関市南部地域をさす。文治五年(一一八九)の奥州合戦後、葛西清重は源頼朝から多くの所領を与えられたが、そのなかに磐井郡の東山・西磐井とともに高倉郡の流二四郷、二迫七郷・三迫一七郷(現宮城県)が含まれていたという(奥州葛西動乱記)。高倉郡は摂関家領庄園高鞍庄(高倉庄)に由来する呼称だが、当時郡名として用いられたかどうかは不明。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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流
る
大宝律,養老律の五刑の一種。追放刑に徒役刑が加えられた自由刑で,配所の遠近によって遠中近の3流に分たれた。徒役はおのおの1年で,それ以後は,配所の戸籍に付せられる。なお律には,このほかに特に遠処に配して,役3年という加役流の制度が定められている。律令制にあっては,流は死刑と並んで重罪とされ,その判決は太政官の議を経て,勅裁によって慎重に確定されることとなっていた。なお日本においては,上代からこの中国法系に属する流刑とは別系統の「ハライ」の一種としての「流」,あるいは新羅・百済法系に属する「流」があって,それらは文字通り孤島に囚を捨てる島流しであった。流刑は明治初期の刑法典である『仮刑律』『新律綱領』にも正刑の一つとしてその刑名があげられているが,実施には困難があり明治3 (1870) 年 11月には「流」を,通常の徒刑より長期のそれに換えて執行する旨を示した「準流法」が定められた。『改定律例』においてそれに代わり懲役刑が行われることとなった。 (→杖〈じょう〉 , 徒〈ず〉 , 笞〈ち〉 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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流
る
流罪・流刑とも。律の五罪の一つ。死についで重いもの。この刑に処せられることを配流という。本籍地からの強制移住と現地での1年間の労役をくみあわせた刑罰で,近流(ごんる)・中流・遠流(おんる)の3等がある。「隋書」倭国伝には「流」が,また「日本書紀」天武5年(676)8月条にはすでに「三流」の別もみえるが,記紀などによれば,古来犯罪人を辺境の地または島に追放する(はふる)という刑罰が行われており,日本律の流罪は,この固有法のうえに唐律の流刑の規定を継受して成立した。中世の武家法にも継承され,鎌倉時代には遠流1種となり,夷島(蝦夷が島)・伊豆大島・陸奥などへ流し,その地の御家人に監視させた。江戸時代には「公事方(くじかた)御定書」に遠島といい,伊豆七島・薩摩・五島の島々などに流していた。流罪の刑に処せられた人を流人といい,流人と配流場所を記したものを流帳といった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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流
る
律令制における刑罰の一つ
律の笞 (ち) ・杖 (じよう) ・徒 (ず) ・流 (る) ・死 (し) の五刑のうち,流刑は罪の軽重により配流地が異なり,遠流 (おんる) ・中流・近流に分けられた。遠流はそのうち最も重く死刑につぐ極刑。遠流は安房 (あわ) ・常陸 (ひたち) ・佐渡・隠岐などで,死罪は罪一等を減じて遠流とされることが多かった。
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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流(りゅう)〔小説〕
東山彰良の私小説的ミステリー小説。祖父殺しの真相を追う17歳の主人公の彷徨を通じ、台湾の現代史を描く。2015年刊。同年、第153回直木賞受賞。台湾出身の作家による同賞の受賞は3人目。
流〔句集〕
安東次男の句集。1996年刊行(ふらんす堂)。1997年、第12回詩歌文学館賞(俳句部門)受賞。
出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報
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世界大百科事典(旧版)内の流の言及
【中国法】より
…さらに法制の背景をなす社会構造も根本から異なっているので,もし律令という名を共通にするという理由で,両者の社会を等質とみなそうとするならば,大きな過誤に陥るおそれがある。[律令格式] 唐律に定める刑罰に五等あり,これを五刑と称するが古代の肉刑の五等とは異なり,笞・杖・徒・流・死をいう。笞も杖も背を鞭打つ刑であるが,竹または木をもってつくり,笞は細く杖は太い。…
【懲役】より
…すなわち,受刑者が心神喪失状態になった場合は必ず(刑事訴訟法480条),刑の執行によって著しく健康を害するおそれがあるとき,70歳以上であるとき,妊娠150日以上および出産後60日未満のとき,刑の執行によって回復不可能な不利益を生じるおそれがあるとき,祖父母または父母が70歳以上または重病ないし不具で,ほかに保護する親族がないとき,子または孫が幼年で,ほかに保護する親族がないとき,その他重大な事由があるときには,検察官の裁量によって執行停止される(482条)。監獄拘置とともに定役賦科を刑罰内容とする点が,禁錮・拘留との違いであるが,このような懲役を中心的な自由刑とした背景には,18,19世紀のヨーロッパにおいて,自由刑が死刑に取って代わった際に,浮浪者や軽罪者に強制作業を課した懲治場とガレー船漕奴刑や植民地流刑等にみられる受刑者使役の伝統のうえから,単なる施設拘禁では刑罰内容として不十分とされたことがうかがわれる。このような懲役は,18世紀の監獄改良家J.ハワードの唱えた労働をとおしての犯罪者改善という理想とともに,19世紀にも経済的意味のない空役として現実化したこらしめのための苦役をも担うものであった。…
【懲役】より
…すなわち,受刑者が心神喪失状態になった場合は必ず(刑事訴訟法480条),刑の執行によって著しく健康を害するおそれがあるとき,70歳以上であるとき,妊娠150日以上および出産後60日未満のとき,刑の執行によって回復不可能な不利益を生じるおそれがあるとき,祖父母または父母が70歳以上または重病ないし不具で,ほかに保護する親族がないとき,子または孫が幼年で,ほかに保護する親族がないとき,その他重大な事由があるときには,検察官の裁量によって執行停止される(482条)。監獄拘置とともに定役賦科を刑罰内容とする点が,禁錮・拘留との違いであるが,このような懲役を中心的な自由刑とした背景には,18,19世紀のヨーロッパにおいて,自由刑が死刑に取って代わった際に,浮浪者や軽罪者に強制作業を課した懲治場とガレー船漕奴刑や植民地流刑等にみられる受刑者使役の伝統のうえから,単なる施設拘禁では刑罰内容として不十分とされたことがうかがわれる。このような懲役は,18世紀の監獄改良家J.ハワードの唱えた労働をとおしての犯罪者改善という理想とともに,19世紀にも経済的意味のない空役として現実化したこらしめのための苦役をも担うものであった。…
【流刑】より
…労働に従事させる場合も多い。流刑に処された土地を流刑地という。日本では流罪(るざい)ということが多く,また江戸時代には離島に送る刑を遠島といった。…
※「流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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