日本大百科全書(ニッポニカ) 「浦東」の意味・わかりやすい解説
浦東
ほとう / プートン
中国、上海(シャンハイ)市東部の副省級区(省と同程度の自主権を与えられた市轄区)。常住人口518万7200(2012)。中華民国期は川沙(せんさ)県と称され、初めは江蘇(こうそ)省に属したが、1927年に上海市管轄下に移った。近代以降、産業の中心は製塩、紡績および漁業であった。中華人民共和国成立後、とくに改革開放以降、他地域よりは経済発展が先行したが、全国的には目だつ存在ではなかった。1992年に川沙県が廃止され、経済管理区として浦東新区が成立してから、発展の方向性が質的に変化した。2000年浦東新区人民政府が成立して副省級区となり、大幅な自主権が与えられたことによって経済発展が加速。2009年には隣接の南匯(なんわい)区を吸収した。2010年同新区で上海国際博覧会(上海万博)が開催され、2016年には上海ディズニーランドが開業し、国内外の注目を集めた。しかし近年、中国政府の優遇政策が天津(てんしん)市の副省級区である浜海(ひんかい)新区に傾き、浦東の成長には鈍化がみられる。
上海の新都心として機能し、金融、海運、技術開発などの産業が盛ん。区内の陸家嘴(りくかし)金融貿易区には上海証券取引所、不動産取引センターのほか、HSBCホールディングス、シティバンクなどの外資系銀行が建ち並ぶ。金橋(きんきょう)輸出加工区、外高橋(がいこうきょう)保税区、張江(ちょうこう)ハイテクパーク(半導体、バイオ製薬を柱とする工業団地)などでは、さまざまな優遇政策を打ち出して積極的に外資系企業を誘致している。日本企業は1000社以上が進出し、日本人学校もある。また、上海の中心部から約30キロメートル東方には上海浦東国際空港があり、国内外の諸都市とを結ぶ要となっている。同空港と上海の中心部とを結ぶリニアモーターカーが区内を通る。
[周 俊 2017年4月18日]