精選版 日本国語大辞典 「紡績」の意味・読み・例文・類語
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短い繊維に操作を加えて長い糸につくること。天然繊維のほか、化学繊維をステープルの状態にして紡績する。
紡績の方法は繊維によって多少の差はあるが、共通する基本的操作は次のとおりである。(1)不純物の除去 種子、茎、枝、土砂などは普通、機械的な方法によって除去する。羊毛の油脂分、麻のペクチン質、絹のセリシンなどは、温湯・薬品などを使う精練によって除去する。(2)短繊維の除去 短繊維は糸にむらをつくり、強さを低めるので、混打綿機、開毛機、カード・コーマなどの機械で除去する。(3)開繊 原料のかたまりを分けほぐして、不純物を除去しやすいよう、また紡績しやすいようにする。(4)スライバー製造 カードによって帯状の長いスライバー(篠(しの))にする。(5)延伸 スライバーを引き伸ばして太さを細くし、繊維の配列を整える。(6)加撚(かねん)および巻取り 細くしたものに撚(よ)りを加えて糸とし、適宜の大きさに巻き取る。(7)糸の仕上げ できた糸を円筒形のチーズや綛(かせ)の形に巻き返す。このあと2本あわせて撚りをかけて双糸にしたり、ガスで毛羽を焼き切ってガス糸にしたりする。
[石川章一]
天然繊維では、綿、毛、麻、絹がおもで、綿紡績、毛紡績、麻紡績、絹紡績として発達した。綿紡績には、普通のもののほか、高級品をつくるためのコーマを使う紡績や、くずなどを原料とする落綿(らくめん)紡績がある。毛紡績には、優良な長い毛を使って細い糸をつくる梳毛(そもう)紡績と、短い毛で太い糸をつくる紡毛紡績がある。
麻紡績にはその原料別に亜麻(あま)紡績、ラミー紡績、ジュート紡績などがあり、絹紡績は生糸にできない屑繭(くずまゆ)や再生絹糸を用いる。化学繊維の紡績は天然繊維と混紡する場合に、それぞれ綿紡式、梳毛式、麻紡式、絹紡式などが応用される。また、化学繊維だけの場合は、短い繊維のときは綿紡式、長い繊維のときは梳毛式である。
[石川章一]
紡績は古代から手工的に行われ、手のひらや指で撚りをかけて糸としたものがもっとも古い形である。糸に撚りをかけるために回転させ、糸を巻き取るための紡錘(つむ)は古くから案出されており、紡績機械のなかではいちばん古い。この原始的な方法としては、握り錘(つむ)、転がし錘、つるし錘の方法がある。いずれも手、指、股(また)などを利用する手工的なもので、握り錘による方法は、錘の長い軸の先端に篠を結び付け、篠を引き伸ばしながら錘を両手で握って回転させて糸をつくり、できた糸を適当なものに巻き付ける。転がし錘による方法は、先端に篠を結んだ錘を地面に差し込み、これを右手のひらと左手のひらと股・すねなどで転がして撚りを加え、左手で適当に引き伸ばし、できた糸を錘に巻き付ける。つるし錘の方法では、小形の錘を空中につるして先端に篠を結び、錘を手で回転させて、その重みによって延伸し撚りを加える。何回か繰り返して糸が長くなり、錘が地面に届いたら糸を錘に巻き付ける。このように錘を直接手で回すことは、中世の紡車の発明によって変わる。手で回す大きな車によって、紐(ひも)で錘に取り付けた小さい車を速く回し、片方の手で篠を持ち、その位置を適当にとることによって、篠に回転と延伸を与えて糸とする。適当な長さになったとき糸を錘に巻き付ける。交互にこの操作を行って紡績するこの方法は、比較的近世まで世界各地に行われ、日本でも江戸時代までこのような紡車(ぼうしゃ)が使われていた。
このあと、撚りを加えることと、糸を巻き取ることを同時に行う方法が考えられ、錘に腕(フライヤー)を取り付け、また錘に糸を巻き取る木管(ボビン)をはめ、両者に異なる回転を与えて撚りと巻き取りを行わせるようにしたのは、レオナルド・ダ・ビンチであったといわれ、その原理によるサクソニー紡車と称する方法がヨーロッパで実用化され、広く普及した。
18世紀になると織機の進歩が著しく、それが紡績の改良を促し、機械紡績は発達を続け現代に至っている。
[石川章一]
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…エジプトでは亜麻と木綿,西アジアでは亜麻と羊毛,ヨーロッパでも亜麻と羊毛,インドでは木綿,中国では麻と絹と木綿,日本では麻と絹というのが,中世までの各地の民族の主として利用してきた繊維である。
【紡績】
樹皮や草皮も細く裂いただけではあまり強くもないし,長くもないが,それに撚り(より)を加えると,ある程度の強さと,長さが得られる。繊維を引き出して撚りをかけ,糸にすることを紡ぐというが,撚りは紡ぐことの重要な要素である。…
※「紡績」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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