工業立地を促進させるとともに、無秩序な立地に伴う地域の乱開発や公害の発生を防ぐために、あらかじめ地方公共団体や政府関係機関などが、工場やその関連建物の立地を目途に造成した工業用地。現在日本での造成実施の開発主体は、独立行政法人の「都市再生機構」(旧、都市基盤整備公団および旧、地域振興整備公団の地方都市開発整備部門)、県や市による「開発公社」が多く、小規模のものには純民間の場合も少なくない。団地には通常複数企業の工場が立地するが、「中小企業団地」として設定される場合には、多数企業の同種類の工場が集団立地することが多い。団地の敷地は、広域的包括的な計画により、選定地域に用地をつくり、区画割りをする。分割供用以前に、道路、上下水道、電力などの工業用関連施設が整備され、団地内の緑化にも留意して環境美化も行われる。立地企業の工業投資を守る見地から、土地利用の指示、地域割りによる土地・建物の規制、売却・賃貸行為への法的規制や税制上の優遇措置が確立され、地方自治体やそのほか団地外との交渉の多くは開発主体が行う。なお、企業が立地点を選定後、団地造成を地方公共団体に委託する場合もある。
工業団地はイギリスのマンチェスター郊外での実現に始まり(1896)、シカゴのセントラル・マニュファクチュアリング団地(1905)も早い。第二次世界大戦後に、工業拡大、工場規模増大、用地不足、基盤整備充実、協業化などから団地に対する需要が激増し、各国の工業立地政策に組み込まれて著しく発展した。新規造成のみでなく既成工業地域での再開発による団地もあり、開発途上国でも活発である。
日本では、1960年代の高度成長期に造成が盛んになり、地方自治体の工場誘致政策の中核になった。ただし、1980年代後半以降、工場の海外進出や移転の本格化に伴って、国内では工場誘致がむずかしくなったことや立地企業からの要請もあって、流通機能を立地させたり、事務所も立地させたりする工業団地もある。これらは流通工業団地、産業団地などとよばれることもあり、工業団地も工場だけが立地する用地とは限らなくなっている。
[柾 幸雄・加藤幸治]
『川端基夫・宮永昌男編著『大競争時代の「モノづくり」拠点――工業団地のサバイバル戦略』(1998・新評論)』
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…工場や商店などの企業群のために,総合的な計画に基づいて土地を造成,区画割りし,用地開発を行って企業群を収容した団地をいう。自動車工場とその関連工場のような大規模な工業団地,中小企業の店舗・工場を集団化あるいは合理化するための中小企業団地,卸売市場・問屋街・倉庫・トラックターミナルなどを集める商業団地(流通団地)などがあるが,なかでも工業団地が重要である。企業団地造成の際には,道路,港湾,電力,ガス,上下水道,汚水処理など公害防止のための施設が事前に完備され,敷地利用や建築上の規制,排水物の量や内容についてもきびしく規定されている場合がほとんどである。…
※「工業団地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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