改訂新版 世界大百科事典 「海産顕花植物」の意味・わかりやすい解説
海産顕花植物 (かいさんけんかしょくぶつ)
sea-grass
海水中に生える種子植物の総称。分類学的にはすべてが単子葉植物の沼生目(オモダカ目)の中に含まれる。この目の中のトチカガミ科,ヒルムシロ科,イトクズモ科などの淡水生植物が,海水中での生活に適応するように進化したものと考えられている。世界に12属約100種があり,いずれも海岸に近い浅い海底に大きな群落をつくり,藻場を海藻とともに形成している。日本などの温帯で見られる代表的なものはアマモ属とスガモ属である。熱帯,亜熱帯(日本では沖縄)にはウミショウブ属,ウミヒルモ属(トチカガミ科),ベニアマモ属,ウミジグサ属(イトクズモ科)などが見られる。海水への適応でとくに著しいのは,送粉の様式で,この仲間独特の水流によるものが発達しており,その典型的なものにアマモ属やウミジグサ属の糸状花粉,ウミヒルモ属の数珠状花粉塊,ウミショウブ属の雄花が水面を流れて雌花につく方式などがある。
執筆者:山下 貴司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報