日本大百科全書(ニッポニカ) 「消化共生」の意味・わかりやすい解説
消化共生
しょうかきょうせい
特定の微生物(原生動物・菌類・細菌)が動物の消化管内にすみつき、その消化酵素が動物の摂取した食物の分解を助けることによって、動物のほうは食物を有効に利用し、微生物のほうはその生息に好適な場所と食物を得るような共生をいう。動物の多くは植物体を構成する主成分であるセルロースやリグニンを分解する酵素をもたないために、これらの成分を利用するには、それを分解する酵素をもつ微生物との共生が必要となる。
草食哺乳(ほにゅう)類のルーメン(反芻胃(はんすうい))には多種多量の原生動物と細菌が共生し、動物の摂取した植物体に含まれるセルロースを分解し、動物はこれらの微生物の代謝産物である低級脂肪酸や過剰の微生物を消化吸収する。材や落葉を食物とするシロアリでは種によって共生する微生物群が異なる。熱帯に広く分布するシロアリ科のシロアリでは消化管内の細菌が消化に関与し、温帯に分布するもの、たとえば日本に分布するイエシロアリやヤマトシロアリではトリコニンファ属やテラトニンファ属などの原生動物がセルロースの分解を行う。哺乳類や鳥類の腸管内の細菌もタンパク質や炭水化物の発酵を行い、動物の消化を助けている。
[安部琢哉]