改訂新版 世界大百科事典 「イエシロアリ」の意味・わかりやすい解説
イエシロアリ
Coptotermes formosanus
ミゾガシラシロアリ科の昆虫。建造物や生立木に激害を与えるシロアリで,関東以西の本州南岸,四国と九州の低地,琉球,中国などに分布。兵アリは頭部に額腺があり,危険を感ずるとそこから乳白色の粘液を分泌する。羽アリは褐色で6~7月の温暖多湿な夜に群飛して電灯によく集まる。王室を中心に,同心円状に配置した多数の小室と粘土の外壁からなる加工巣をつくり,直径1m以上にも達する。この巣から水取り用のアリ道が地下水や水道管の結露部にのびており,職アリは水を運んで湿しながら加害するので,加害範囲は建物全体に及ぶ。対になった羽アリは湿った柱や切株などに潜り込み,10~20日後に第1回産卵を行う。この卵から職アリが育つと女王は産卵に専念するようになり,数年後には100万匹以上の構成員に達する。加害部は巣から数十mの範囲に及び,加害している建造物や切株などに数個の分巣をつくる。
執筆者:森本 桂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報