改訂新版 世界大百科事典 「ヤマトシロアリ」の意味・わかりやすい解説
ヤマトシロアリ
Reticulitermes speratus
木造建築物の害虫で伐根にも多く,北海道旭川市以南の日本各地にふつう。ミゾガシラシロアリ科の昆虫。兵アリの頭部は両側平行で細長く,額腺は退化して粘液を分泌しないことでイエシロアリと区別できる。本種は乾燥に弱く,水を運ぶ能力がないのでつねに湿った材中で生活し,加害部に網目状の簡単な巣をつくるが特別の固定巣はなく,乾燥してくると湿った場所へ移動し,また30℃以上の高温や冬の低温期には地下部や心材部などへ移る。加害は4~7月,とくに梅雨期に激しく,9~10月にも多い。羽アリは黒色で前胸のみ黄色,4月下旬から5月にかけての高温多湿の日の午前10~12時ごろ群飛することが多い。日本各地で兵アリ頭部の形やアリ道加工能力に差があり,5亜種に区別されている。本種は腐朽菌の出す水溶性物質に誘引されて建物へ侵入するので防除には材を湿らせないことが重要であり,加害部は腐朽と共存して食痕内面は不潔である。
→シロアリ
執筆者:森本 桂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報