改訂新版 世界大百科事典 「湯納遺跡」の意味・わかりやすい解説
湯納遺跡 (ゆのういせき)
福岡市西区大字拾六町にある遺跡。国道202号線バイパス工事で発見された遺跡で,縄文時代,弥生時代,古墳時代,歴史時代のさまざまな遺構・遺物が出土している。周辺には弥生時代の遺跡が多く,宮の前遺跡は弥生時代から古墳時代への移行期の墳墓として有名である。遺構は弥生時代後期から古墳時代前期の竪穴住居,水田遺構,井堰,歴史時代の掘立柱建物,井戸,溝,土壙が調査されている。出土した遺物は縄文土器,弥生土器,土師器(はじき),須恵器,瓦器,青白磁,ミニチュア土器,紡錘車,土錘,支脚,木製品など,多岐にわたっている。木製品には平鍬,鋤,槽,竹籠,臼などがあるが,とくに井堰に利用された建築用部材が多量に出土し,その部材から古墳時代の高床式の建物が復原されている。このような復原例は非常に珍しく,多方面から注目されている。
執筆者:佐田 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報