改訂新版 世界大百科事典 「溢血点」の意味・わかりやすい解説
溢血点 (いっけつてん)
petechiae
毛細血管の破綻(はたん)によって生じるアズキ大以下の小出血。それより大きいものは溢血斑という。窒息死の診断上,重要な症状とされる。毛細血管内圧の上昇,低酸素あるいは無酸素状態による毛細血管壁の透過性の亢進,毛細血管壁の痙攣(けいれん)などが成因と考えられ,出現部位は眼瞼結膜,眼球結膜,口腔粘膜,咽喉部の粘膜,肺胸膜,胸腺被膜,心膜,心外膜,腎盂(じんう)粘膜など。窒息死にみられる肺胸膜の溢血点はタルジュー斑点といわれる。絞頸,扼頸(やくけい),胸腹部の圧迫による窒息などの場合には,顔面の皮膚,とくに目の周囲,胸部の皮膚,頭蓋骨の骨膜,側頭筋にも出現する。眼瞼,眼球結膜の溢血点は窒息,とくに絞頸や扼頸による窒息の際に高頻度に出現するが,溺水や吐物吸引による窒息の際は出現率が低い。また,溢血点は窒息死に特有な所見ではなく,感電や一酸化炭素中毒死などの際にも,低頻度ではあるが出現する。
執筆者:小嶋 亨
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報