細菌に特異的に反応する抗体(溶菌素bacteriolysin)が補体の存在下でその菌が溶ける現象をさす場合と,細菌内に入ったファージが菌を溶かす現象をさす場合とがある。前者には,コレラ菌で免疫されたモルモット腹腔内に生きたコレラ菌を入れると菌が死んで溶けるパイファー現象(1894年にパイファーR.F.Pfeifferが発見),菌と抗体の混合液に補体を含む動物新鮮血清を加えると試験管内で溶菌現象が起こるナイサー=ウェクスベルグNeisser-Wechsberg現象等が古くから知られている。後者は,細菌の菌体内に対応したファージが入って増殖する結果,細胞壁を溶かす酵素が作られ,菌が溶ける現象で,平板に培養した菌にファージを含む液を加えると,ファージが入ったところの菌が溶けて溶菌斑(プラーク)を作る。これを利用すると試料中のファージ数が数えられる。
執筆者:木村 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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