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補体 ほたい complement

翻訳|complement

7件 の用語解説(補体の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

補体
ほたい
complement

動物の血液,リンパの中にみられる酵素様の蛋白質の一種で,感染防御や炎症などの生体防御である。抗原抗体反応によって活性化される。熱には弱く,血清を 56℃で 30分加熱すると破壊される。殺菌性をもつことで知られてきたが,溶菌,溶血現象や補体結合反応には必須の化学物質であることが明らかになった。

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デジタル大辞泉の解説

ほ‐たい【補体】

血清中に存在するグロブリン系のたんぱく質抗原抗体との複合体や病原微生物に結合すると活性化し、抗体の働きを補助したり溶菌作用などを現したりする。熱により活性を失う。

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百科事典マイペディアの解説

補体【ほたい】

脊椎動物の正常血清中に存在し,免疫反応を補助する物質。C1からC9までの9成分と各種の反応因子がある。抗原抗体複合物や細菌の表面成分などに反応して,マクロファージなどの食作用を亢進させ,炎症・溶菌・溶血反応などを引き起こす。
→関連項目アレルギー反応抗原抗体反応溶血

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栄養・生化学辞典の解説

補体

 血清にある成分で,抗体と協力して細菌や細胞を破壊する活性をもつ成分.タンパク質で,約20種類がある.

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世界大百科事典 第2版の解説

ほたい【補体 complement】

脊椎動物の正常血清中に存在する物質で,殺菌性物質として見いだされた。アレキシンalexin(防御素の意)とも呼ばれたが,免疫反応に関与することが明らかになるにつれ,抗体の作用を補完するという意味で補体と呼ばれるようになった。
[補体の働き]
 生体内に侵入してきた細菌やウイルスに抗体が反応結合しても,それだけでこの細菌やウイルスが無毒化されることはない。血清中に存在する補体が抗体に引き続いて反応して初めて,これらの病原体は壊され,あるいは食細胞に貪食されるようになる。

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大辞林 第三版の解説

ほたい【補体】

脊椎動物の新鮮な血清中に存在して免疫反応・感染・防御などに関与する20種ほどのタンパク質の総称。また、その反応系。熱に不安定。抗原と抗体との複合体に反応して活性化され、溶血・溶菌、食作用の促進など種々の効果をもたらす。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

補体
ほたい
complement

病原微生物などに対する生体防衛機構のなかで、種々の免疫反応やアレルギー反応の媒介物質として重要な役割を果たしている約20種類の血清タンパク質の総称。血清中では不活性の状態で存在するが、抗原抗体複合物、凝集γ(ガンマ)‐グロブリン、細菌や動物の細胞膜などによって活性化されると、溶血反応や溶菌反応、貪食(どんしょく)作用や炎症の促進など種々の生物活性を示すようになる。
 補体の存在は19世紀末ころから知られていた。すなわち、ある種の病原菌は動物の血清を加えるだけで死滅することが観察され、この新鮮血清に含まれる殺菌作用は56℃で30分の加熱により失われることが報告された。この易熱性の殺菌作用をもつ物質は、ドイツの細菌学者ブフナーHans Buchner(1850―1902)によって1889年、アレキシンalexin(防御素)とよばれた。また、ドイツの細菌学者パイフェルRichard Friedrich Johannes Pfeiffer(1858―1945)は1894年、コレラ菌で免疫されたモルモットの腹腔(ふくこう)内にコレラ菌を侵入させると、菌が死滅溶解(溶菌)する現象(パイフェル現象)をみいだし、ベルギーの細菌学者ボルデは1905年、この溶菌現象には免疫動物の血清中にある耐熱性の物質(抗体)と易熱性の血清成分(アレキシン)が関与し、この両者が不可欠であることを発見した。かくして、アレキシンは抗体の働きを補完するという意味で、補体とよばれるようになった。さらにその後、抗体がなくても細菌やウイルスが直接補体と反応するものもあることがわかり、補体系と総称し、従来の抗体と協同作用を営む反応経路を古典的経路、直接反応する経路を第二経路(代替経路)とよんでいる。また、この補体系の反応を制御する因子も知られ、これを制御タンパク質とよぶ。
 補体系タンパク質のうち、補体の活性化反応に直接関与するタンパク質を補体成分といい、補体の頭文字Cに活性化の順序におおむね従った番号がつけられ、非活性状態から活性状態に変わった各成分に対しては成分記号の下に横線(バー)をつけて表す。また、活性化の過程で補体成分がペプチド鎖の断裂を伴って活性型に変化する場合には、補体成分の後方にa、bをつけて表す。なお、第二経路の補体成分は発見者の命名に従ってB因子、D因子、プロペルジン(P)とよんでいる。[柳下徳雄]

補体の反応経路と働き

一般に、生体内に侵入してきた細菌やウイルス(抗原)に抗体が反応して抗原抗体複合物を形成しても、それだけで無毒化されることはなく、血清中に存在する補体が抗原抗体複合物に接触して反応し、初めて病原体が破壊されたり食細胞に貪食されるようになる。このような働きをする血清中の補体は九つの成分タンパク質からなり、それぞれC1からC9まで名づけられているが、抗原抗体複合物に対してはC1、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9の順に反応して活性化される。このうち、C1は1分子のC1qと2分子のC1rおよびC1sが集合して形成された分子量約74万の複合体で、抗原抗体複合物とはC1qを介して結合する。このC1qの結合によってC1rとC1sが順次活性化され、さらにC1sがC4とC2をそれぞれC4a,C4bとC2a,C2bの各フラグメント(断片)に分解する。このうち分子量の大きいC4bとC2aが結合して酵素活性をもった複合体C4b2aを形成し、これがまたC3をC3aとC3bに分解してC4b2a3bを形成する。続いてこれがC5をC5aとC5bに分解するというように、連続した酵素反応によって活性化が進行し、その後C5bはC6、C7、C8、C9を順次自動的に集合して分子量約100万の巨大複合体を形成、始動物質である抗原抗体複合物の表面に結合して存在する。以上の反応経路が古典的経路である。
 第二経路は抗体出現前の感染初期などにみられる反応経路で、始動物質である病原体の表面にB因子、D因子、C3が接触することによって開始される。すなわち、C1、C4、C2の作用を受けることなく、D因子がC1、B因子がC2、最初に接触したC3がC4のような働きをそれぞれ行って、C3はC3aとC3bに徐々に分解され、このC3bが表面に蓄積されてくると、これにB因子、D因子、プロペルジンが作用してC3bBDPを形成する。これにより新しくC3がふたたび分解され、生じたC3bの一部がC3bBDPに結合すると、C5を分解するようになる。C5以下の反応は古典的経路と同じである。
 これら両経路の途上で生成される補体成分の断片やいくつかの補体成分が結合した中間生成物は、生体防御の面で生体側にきわめて有利に作用する。たとえば、抗原抗体複合物や病原体の細胞表面に結合したC3bはC5以降の反応を誘導するばかりでなく、白血球やマクロファージなどの食細胞に容易にとらえられて貪食されるようになる。これは食細胞表面に抗原抗体複合物などに結合したC3bを認識し、これと特異的に結合するC3b受容体(レセプター)が存在することによる。また、C3aやC5aは周辺の肥満細胞に作用してヒスタミンなどを放出させ、血管の透過性を亢進(こうしん)させる。さらにC5aは白血球を呼び寄せる走化性が強く、局所での貪食作用を促進させる。なお、反応の最終産物である巨大複合体は、標的細胞の膜障害を引き起こして溶血反応や溶菌反応などを示すようになる。
 このような補体系の作用も、リンパ球細胞を中心とした免疫反応と同様に、いつも有利な結果だけをもたらすわけではない。たとえば、前述のヒスタミン放出によるアレルギー反応をはじめ、本来は抗原にならない自己の赤血球や甲状腺(せん)細胞などが生体にとって異物となり、これに対する抗体が産生されると、自己免疫性溶血性貧血や橋本病などの自己免疫疾患がみられるほか、全身性エリテマトーデスに併発する腎炎(じんえん)なども、局所に沈着した抗原抗体複合物が補体系による活性化で引き起こされる免疫複合体病と考えられている。これらは、異常に産生された抗体により、生体防御という補体系の機能が裏目に出たものである。ときに生体に好ましくない結果をもたらす補体系の監視役をするのが制御タンパク質で、C1インアクチベーターやC3bインアクチベーターなど10種近くが知られ、それぞれ過剰に生じたC1rやC1sのほか、C3aやC3bあるいはC4bやC5aなどを失活させる。
 なお、きわめてまれではあるが補体欠損症とよばれるものがあり、遺伝的に補体成分の産生が欠損または低下している状態をいう。この患者は、抗体が欠損している場合と同様に、種々の感染症にかかりやすく、かつ重篤化することが多い。また、制御タンパク質が欠損すると補体成分産生の歯止めがなくなるので、種々の病気を引き起こすことになる。[柳下徳雄]

補体結合反応

梅毒のワッセルマン反応やウイルス感染症の補助診断、あるいは研究用に広く用いられている血清反応で、種々の抗原抗体複合物に対して補体が非特異的に反応することを応用したものである。血清中の抗体や培養液中の抗原(細胞膜抗原、粒状抗原、可溶性抗原)などを検出するために用いられるが、検出できる抗体は古典的経路を活性化するものに限られる。この反応は、抗原と抗体の混合液に一定量の補体を加えて低温で反応させる第一段階と、感作血球を加えて残存する補体量を測定する第二段階に分けられる。第一段階で抗原抗体反応がおこれば補体が消費されて第二段階で溶血反応がみられないが、逆に第一段階で抗原抗体反応がおこらないと補体が消費されないので第二段階では溶血反応がみられる。臨床検査用には、既知の抗原に反応する抗体が患者の血清中に存在するかどうかを調べるほか、逆に既知の抗体を用いてこれに反応する抗原の存在を調べたりする。この補体源としては、あらかじめヒツジの赤血球に吸収させたモルモットの新鮮血清が用いられることが多い。
 なお、反応液中に細菌や凝集γ‐グロブリンなどが含まれていた場合にもテスト結果が陽性となるが、抗原抗体反応によらないので疑陽性とよばれる。したがって、不純物を除いてから補体結合反応を行う必要がある。[柳下徳雄]

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世界大百科事典内の補体の言及

【炎症】より

…この現象を白血球の化学走性chemotaxis(〈走性〉の項目参照)という。好中球の場合,化学走性を起こすおもな因子として細菌と補体とがある。好中球がなぜ化学走性を示すのかはまだ十分に解明されていないが,化学走性を起こす因子にあるポリペプチド鎖と結合する受容体が好中球の表面に存在し,まずこの部分での結合が最初に起こると考えられている。…

【血液】より

…病原体が侵入して増殖することを感染といい,感染の部位に生ずる生体の反応を炎症という。炎症は感染などの外からの刺激に対抗して生体内に生ずる防御反応であり,血液中に存在する抗体,補体,白血球の協同作用により行われる。抗体は,リンパ球が分泌する免疫グロブリンで,再感染を防ぐのに役だつ。…

【免疫】より


[新しい概念の確立]
 こうして,免疫の重要な二つの側面,抗体による体液性免疫と細胞が直接働く細胞性免疫についての研究が進展し,それぞれについて重要な発見が相次いだ。抗体については,それが抗原と特異的に反応できるタンパク質で,しばしば血清中の他の一連の酵素系(補体)を活性化して,さまざまな生体内反応を起こすこと,試験管内では抗原と結合して沈殿を起こしたり(沈降反応),もし抗原が粒子状抗原であればそれの凝集を起こしたりする(凝集反応),いわゆる〈抗原抗体反応〉を起こすことがわかった。補体を活性化すれば,抗原の溶解や破壊,白血球による貪食を誘導する。…

※「補体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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