改訂新版 世界大百科事典 「漢語讃」の意味・わかりやすい解説
漢語讃 (かんごさん)
声明(しようみよう)曲の分類名。〈かんごのさん〉ともいう。讃の類で,漢文の詞章を音読するもの。五言または七言四行の韻文が普通。梵語讃より種類が少なく,通常用いるのは《四智漢語讃》《心略漢語讃》《吉慶(きつきよう)/(きつけい)漢語讃》《諸天漢語讃》ぐらいで,ほかに《不動漢語讃》などがある。一般に無拍の曲で,ユリなどの装飾的なフシを主とする曲節だが,天台系では《諸天漢語讃》を有拍かつ旋律的に唱える。梵語讃と同様に密教立(みつきようだて)の法要に用い,その主要部分の前後に前讃・後讃として用いたり,長い法要の中間の折り目に中間讃(ちゆうげんさん)として用いたりするが,詞章の内容が法要の内容と一致するとはかぎらない。なお,浄土系・禅系の声明の《香讃(こうさん)》《結讃(けつさん)》《三宝讃(さんぼうさん)》などは,広義の漢語讃と言えないこともないが,普通はこの名称を用いない。同様に《散花(さんげ)》《伽陀》なども漢語讃とは称さない。
→讃
執筆者:横道 万里雄
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