ふし

精選版 日本国語大辞典 「ふし」の意味・読み・例文・類語

ふ‐し【罘

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「罘」は復、「」は思の義 ) 宮門の内にある屏。臣下が奏聞するとき、門内にはいり、この屏を前にし、今一度そのことを再考すべきであるというところからいう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕 〔古今注‐都邑〕
  3. 椅子の後に立てる板張り屏風。ついたて。
    1. [初出の実例]「罣 板屏在椅子後者、亦禰(フシ)(俗に云ふ衝立の類)」(出典随筆・南屏燕語(1826)三)

ふしの補助注記

については一説門外にありとし、また闕に連なる曲閣とする。


ふし

  1. 〘 名詞 〙 樫の柄に鉄の三叉(みつまた)のついた銛(もり)。魚を突くのに用いる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ふし」の意味・わかりやすい解説

フシ(節) (ふし)

日本音楽の理論用語。主として声の旋律に対する概念で,楽器に関してはあまり用いない。分野や場合によって,さまざまな意味がある。まず,もっとも広義には詞章に対する旋律,あるいは楽器の声部に対する声の声部をいう。節付けなどというときのフシがこれである。次に,能の(うたい)では,音楽的に作曲されている部分,すなわちヨワ吟ツヨ吟の部分をフシという。この場合は,作曲されていないコトバに対する。また声楽旋律としても,とくに美しく作曲されている旋律をフシということがあり,平曲ではそのような旋律を聴かせることを眼目にした演目を節物という。節物は拾イ物(ひろいもの)(拾イ)に対する。旋律進行上のまとまった一単位をフシと称することは,比較的広い分野で行われており,前述の節付けの場合も,実際上は,この意味におけるフシともいうことができる。この単位は,規模は大小さまざまだし,旋律の形も半ば固定しているものと,大まかな枠組みのみあって細部の変化が著しいものとがある。また,フシは〈〉の対概念として説明されるものでありながら,近世邦楽におけるこの意味でのフシは,手と一体といってもよいほど,密接な関係にある。義太夫節では,地合(じあい)の進行に小段落をもたらすフシ落チという型を,丸本では単にフシと表記するほか,〈ハルフシ〉〈フシハル〉〈本ブシ〉など特定の旋律を表す語がある。次に,義太夫節に限らず三味線音楽では,流派の様式,あるいは流派そのものを〈なになに節〉と呼称する。これは,義太夫節,常磐津節,清元節,新内節など浄瑠璃の流派を区別するものであったが,荻江節,浪花節など,浄瑠璃以外に用いている例もある。同様に,太夫や唄方の個人様式を〈だれだれ節〉と通称することも多い。上記の流派名も,元来は個人様式を示したものであった。そのほか,民謡や流行歌には,曲名の最後にこの語がつけられているものが少なくない。その場合のフシは,旋律というより歌の意味が強い。
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普及版 字通 「ふし」の読み・字形・画数・意味

視】ふし

見下す。全体を把握する。〔北江詩話、三〕韓)の一切をするを以てして、必ず諄諄(じゆんじゆん)として曰く、辭を爲(つく)るに、宜しく略(ほぼ)字をるべしと。

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【不】ふし

限りがない。はかられぬ。無数。〔史記、貨殖伝〕巴蜀の寡、其の先(世)丹を得て、其の利を擅(ほしいまま)にすること數世、家亦た不なり。

字通「不」の項目を見る


施】ふし

分施する。

字通「」の項目を見る


【敷】ふし

開墾する。

字通「敷」の項目を見る


【腐】ふし

腐肉。

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世界大百科事典(旧版)内のふしの言及

【謡】より

…謡のみを稽古する素人の数はきわめて多く,それが能界の経済的基盤となっているほどである。 謡の音楽構造は,旋律様式の上からはコトバとフシ(節)に,リズム様式の上からは拍子不合(ひようしあわず)と拍子合(ひようしあい)に,それぞれ分けられる。コトバというのは,節付けされていない部分,すなわち音楽的に作曲されていない部分であるが,特定の抑揚をつけて謡われる。…

【旋律】より

…音楽を構成する最も基本的な要素の一つで,メロディmelody,(ふし)ともいう。最も広義の旋律とは高低変化を伴う一連の音が横(線的・継時的)に連なったものを指し,複数の音を縦(同時的)に結合した和音,および和音の進行からなる和声と対照的な現象といえる。しかし,リズムを欠いた音の連続は抽象的な音列ないし音高線にすぎず,音楽としての旋律は音の高低とリズムの結合によってはじめて成立する。また,一般に旋律とは音楽的にあるまとまりを示す音の連なりを指し,断片的なパッセージや自立性の乏しい副次声部は旋律と呼ばないのが普通である。…

【能】より

…これらの上着だけを大口の上に掛けて着ることもある。能装束
【謡】
 能では,曲節を伴うフシの部分と,せりふに相当するコトバの部分を合わせて謡と称する。謡の楽型は,吟型とノリ型の二つの面から見ることができる。…

※「ふし」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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