日本大百科全書(ニッポニカ) 「火星年代記」の意味・わかりやすい解説
火星年代記
かせいねんだいき
The Martian Chronicles
アメリカのSF詩人レイ・ブラッドベリの代表作で、13の短編からなるオムニバス長編(1950)。1999年から2026年に至る地球人の火星探検と植民地化までの物語。火星人の敵意にあって1次から3次までの探検隊は全滅するが、次の探検隊が到着してみると、火星人は地球人から感染した水疱瘡(みずぼうそう)でほぼ全滅していた。そこで地球からの本格的植民が始まる。火星で陰鬱(いんうつ)なアッシャー家を再現するE・A・ポーに憑(つ)かれた男。死んだ妻と子供の精巧なロボットをつくって暮らしている老人。核戦争が勃発(ぼっぱつ)した地球を見限り、第二の人生を求めて火星にやってきた男などのエピソードが叙情的に、またあるときは幻想的に描かれている。
[厚木 淳]
『小笠原豊樹訳『火星年代記』(ハヤカワ文庫)』