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火星 かせいMars

翻訳|Mars

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

火星
かせい
Mars

太陽系の内側から4番目の惑星太陽からの距離は,近日点 2億 666万 km,遠日点 2億 4923万 km,軌道の離心率は 0.093で,これは水星に次ぐ値であり,この楕円軌道が,ケプラーの3法則 (→ケプラーの法則 ) 発見の貴重な決め手になった。公転周期は 687日で,地球との会合周期 780日は,どの惑星よりも大きい。接近時の実視等級は-2.8等に達し,これは金星に次いで全天2番目。赤道半径約 3397kmで地球の約半分,表面重力は地球の約 0.38。自転周期は 24時間 37分 23秒で地球とよく似ている。自転方向は順行。表面はみごとな赤褐色で,一部分暗青色のところがあり,また両極の白い極冠の消長などから,その表面の状況に関するいろいろな想像が生まれた。線条模様の運河説 (→火星の運河 ) ,それと関連して火星人の想像などが最も著名。衛星はフォボスデイモスの2個で非常に小さく,また表面に近いところを回っている。 2004年1月以降は火星に着陸した人工衛星から切り離された2台の探査車が火星表面上を探査している。そのうちの探査車「オポチュニティ」の調査では,火星に水が存在した岩石学的な証拠が見出された。火星の大気の主成分は二酸化炭素であるが,大気自体の量は少なく,圧力としては地球の約 170分の1程度しかない。

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知恵蔵の解説

火星

地球の外側を回る第4惑星。赤色に輝き、およそ2.1年(780日)ごとに地球に接近する。望遠鏡では、赤褐色の表面に暗い模様と、両極に白く輝く極冠が見える。これらは季節変化を示し、極冠は季節によって拡大縮小する。探査機(1976年のバイキング、97年のマーズ・パスファインダーなど、いずれも米)によってクレーター、巨大な火山、深い長大な渓谷、水の流れた跡などが見つかった。ほとんどが低温の乾燥した砂漠地帯だが、極冠や地下には大量の水が存在すると考えられている。03年に軟着陸した米の探査機オポチュニティーとスピリットは、岩石の微細な構造や化学的な特性の解析から、かつて火星に大量の水が存在していた証拠を発見した。また、火星を周回するヨーロッパ宇宙機関(ESA)の探査機マーズ・エクスプレスも、上空からの分光観測から、火星の南極の極冠付近に水の分子や氷の存在を確認した。水の存在は生命存在の可能性につながるが、生命が存在する証拠は見つかっていない。火星大気は、主成分が一酸化炭素(95%)、気圧は地球の1%程度で生物の生存には適していない。2つの小型衛星フォボス(Phobos)とダイモス(Deimos)がある。

(土佐誠 東北大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

か‐せい〔クワ‐〕【火星】

太陽系の4番目の惑星。地球のすぐ外側に軌道をもつ赤い星で、最大の明るさはマイナス3.0等。太陽からの平均距離2億2790万キロ、すなわち1.5237天文単位、公転周期1.8809年。780日ごとに地球と近づく。自転周期は1.0260日。赤道半径は3397キロ、質量は地球の0.107倍。昼夜・四季があるが、大気は希薄で気温は低い。極地に白い極冠をもち、冬季に大きく広がる。多数のクレーター大峡谷などもあり、2個の衛星をもつ。熒惑(けいわく)。ほのおぼし。マルス。マース
[補説](衛星)フォボスダイモス

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百科事典マイペディアの解説

火星【かせい】

太陽系の第4惑星。太陽との平均距離2億2800万km,公転周期1.88年(687日)。780日ごとに地球に接近,15〜17年ごとに大接近し,最近距離は5500万km,最大光度−2.8等。
→関連項目極冠

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占い用語集の解説

火星

牡羊座の支配星。蠍座の副支配星。古代ローマの軍神マルス(ギリシア神話ではアレス)から命名。赤い惑星であり、昔から不吉な星だとされた。占星学上の基本的意味は「積極性」。さらに、闘争のシンボルともされる。目的を達する情熱、男性的なパワーや、欲望などを表す。ホロスコープ上での火星のありかたによって、その人の活動力の状態を判断する。また女性のホロスコープ上での火星は、ユング心理学(心理占星術)において、アニムス(理想の男性)を表すといわれる。

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世界大百科事典 第2版の解説

かせい【火星 Mars】

軌道半長径=1.52369天文単位離心率=0.0934 軌道傾斜=1゜.850太陽からの距離 最小=2.067×108km,平均=2.279×108km,最大=2.492×108km公転周期=686.98日 平均軌道速度=24.08km/s会合周期=779.9日 赤道半径=3397km体積=0.1506(地球=1) 質量=0.10745(地球=1)平均密度=3.93g/cm3自転周期=1.0260日 赤道傾斜角=25゜.19アルベド=0.16 極大光度=-2.8等赤道重力=0.38(地球=1) 脱出速度=5.02km/s火星は,そのやや不気味な赤色のゆえに,昔から戦いの神マルスの名を冠せられてきた。

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大辞林 第三版の解説

かせい【火星】

太陽系の第四惑星。地球の軌道のすぐ外側に軌道をもつ。赤く見えるので、西洋では軍神マルスにたとえられ、日本では「災星わざわいぼし」「炎星ほのおぼし」などといわれる。中国名は熒惑けいこく。公転周期1.88年。自転周期は約24時間37分。赤道半径3397キロメートル。質量は地球の0.107倍。二つの衛星をもつ。冬になると大きくなる極冠が知られている。また、クレーターや、過去に水の浸食を受けたように見える大峡谷なども発見された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

火星
かせい
Mars

地球の軌道のすぐ外側を運動している太陽系の惑星。太陽から見て4番目の軌道を公転している。赤く見え、古来、戦争や不幸と結び付けて考えていた民族が多い。火星のヨーロッパ名マルスは軍神をさす。中国では「(けいわく)」ともよんだ。日本では西南戦争後、西郷隆盛の霊とされ「西郷星」とよばれたこともある。[村山定男]

軌道

火星の太陽からの平均距離は1.5237天文単位(2億2794万キロメートル)、公転周期は1.8809年(地球の日数で687日)である。軌道の離心率は0.09339で、水星に次いで大きく、かなりな楕円(だえん)軌道をもち、太陽からの距離は近日点と遠日点では4200万キロメートル余りの差がある。[村山定男]

火星の接近

この大きな離心率のために、火星と地球の間の距離は大きく変化する。地球との会合周期は780日である。いいかえれば地球は780日(約2年2か月)ごとに火星に追いついて衝(しょう)となり、そのころ地球と火星が接近する。しかし、火星の軌道の離心率が大きいため、地球と火星の軌道の間隔は衝のおこる方向によってかなり異なる。火星の近日点の方向にあたる8月ごろに衝となれば、地球と火星の間はおよそ5600万キロメートルの「大接近」となる。反対に遠日点の方向にあたる2月ごろに衝となれば、1億キロメートル余りまでしか接近しない。軌道のほぼ同じ位置で衝となるのは、2年2か月ごとの接近を7~8回繰り返して一度であり、大接近は15~17年ごとにおこる。20世紀中の大接近は1909年、1924年、1939年、1956年、1971年、1988年であり、もっとも接近したのは1924年の5578万キロメートルであった。21世紀最初の大接近となる2003年は、地球と火星の距離が5576万キロメートルと過去3000年に例がない大接近であり、次にこれを上まわるのは2287年である。[村山定男]

大きさ・自転・明るさ

火星の赤道半径は3397キロメートルで、地球の半分余り、月の約2倍である。質量は地球の0.107倍、密度は水の3.93倍である。自転周期は24時間37分余りで、地球よりわずかに長い。自転軸の傾きは25度余りで、地球とよく似ており、四季の変化がある。また表面重力は地球の0.37倍である。
 火星の明るさは、大接近のころの極大光度がマイナス2.8等で、木星をしのぎ金星の次に明るく、視直径は25秒余り、70倍の望遠鏡で、ほぼ肉眼で見る満月の大きさに見える。[村山定男]

火星表面の模様

望遠鏡で火星の表面を見ると赤橙(せきとう)色の表面に薄暗い模様が見える。火星の表面模様を初めて記録したのはオランダのホイヘンスで、1659年のことであった。その後、望遠鏡の発達とともに詳しい観測が行われるようになり、最初に火星面の地図を描いたのは、1840年、ドイツのベールWilhelm Beer(1797―1850)とメドレルJohann Mdler(1794―1874)であった。1877年の火星大接近のとき、イタリアのミラノの天文台長であったスキャパレリは口径22センチメートルの屈折望遠鏡で火星面模様の詳しい測定を行い、多くの模様にラテン語で、古代の地名や神話にちなんだ名称をつけた。スキャパレリ以前にも一部の模様には人名などがつけられたことがあるが、以後はこのスキャパレリの命名が広く用いられるようになった。[村山定男]
運河
スキャパレリは、大きな暗い模様には海、すこし小さいものには湖・湾などの名をつけたが、そのほかに多くの線状の模様を観測してカナリ(水路)とよんだ。これがのちに「火星の運河」とよばれて論議の的となったものである。とくにアメリカのローウェルは19世紀末から20世紀の初めにかけて、アリゾナ州のフラッグスタッフに61センチメートルの屈折望遠鏡を備えた私立天文台を建て、火星の観測に熱中した。彼によれば、運河は幾何学的な直線であって網のように火星の全面を覆い、しかもいろいろと不可思議な変化をするところから、とうてい自然現象とは思われず、火星の高等生物が乾いた火星面に灌漑(かんがい)を行うためにつくった運河である、と主張した。
 このような運河が実在するか否かについては賛否両論が対立し、長く論議が続いたが、火星表面の温度や大気などについての物理的な観測が始まって、火星面は高等生物が住めるような条件ではないと考えられるようになり、一世を風靡(ふうび)した火星人説も消えていった。望遠鏡観測時代の総決算ともいえるもっとも詳細な火星図は、1930年にフランスのアントニアディEugne Antoniadi(1870―1944)によってつくられた。彼は運河を斑点(はんてん)の連続や明暗の区域の境界などとして描いている。[村山定男]
極冠
火星の表面模様に季節に伴い、あるいは永年的に変化がおこることは広く認められている。なかでも目だつのは、北極・南極に白く見える極冠で、冬季には大きく広がるが、夏の終わりにはほとんど消えてしまう。古くから極地の雲と考えられてきたが、今日では、二酸化炭素が凍ったドライアイスであるという説が有力である。しかし、少なくとも夏の終わりまで残る極冠の中心部は、二酸化炭素の凍結する温度より高温であることから、氷であると考えられている。
 このほか、模様の濃さや形が季節変化をするものも多く、一般に夏季には濃さを増し、冬季には薄れる。また長年月の間にしだいに形や面積を変える模様もあり、突然現れる斑点などもある。[村山定男]
火星表面にはしばしば雲も現れ、とくに夜明け時や夕暮れ時にあたる地方に白雲が輝いて見られることが多い。また、ときには広範囲に黄色の雲が現れる。この黄雲は砂嵐(すなあらし)で、とくに南半球の夏季に大規模なものが現れることが多く、火星全面の暗斑が見えなくなってしまうような場合もある。[村山定男]

地形

望遠鏡観測の時代からの火星に関する知識をさらに詳しく究め、あるいはまったく新しい知識をもたらしたのが火星探査機である。1965年に初めて火星に接近して観測したアメリカのマリナー4号は、火星表面に多くのクレーターが存在することを発見して学界を驚かせた。その後、1969年にはマリナー6号、7号が観測を行い、さらに1971年のマリナー9号は火星の人工衛星となって、長期にわたり火星面の写真撮影などを行って火星面地形を明らかにした。
 火星表面には多くのクレーターのほかに、多くの巨大火山も存在することが判明した。とくにタルシス地方とよばれる地域には巨大な火山が並び立ち、その最大のものは「オリンパスの山」と命名され、高さは周囲の平原から2万6000メートル、山麓(さんろく)の直径は600キロメートルに及ぶ。また火星面には種々の谷が見られ、もっとも著しいものは「マリナーの谷」とよばれる長さ4300キロメートル、最大幅200キロメートルに及ぶ大地溝である。また谷の中には水の侵食によると思われるものも多く、今日では乾燥している火星面にもかつてはかなりの流水があったと考える学者も多い。[村山定男]

大気・生物

火星表面の状況をもっとも詳細に探査したのは、1976年夏に火星面に軟着陸して観測を行ったアメリカ(NASA(ナサ)=アメリカ航空宇宙局)のバイキング1号、2号で、この探査機によって初めて火星の大気や土壌の性質、生物の有無などが直接に調べられた。その結果によれば、火星の大気圧は6~7ヘクトパスカル、大気の組成は二酸化炭素が95.3%を占め、残りは窒素2.7%、アルゴン1.6%、酸素は0.3%などとなっている。
 水蒸気はきわめて乏しく、液体の水に換算すると2~30マイクロメートルの厚さにしかならない。また火星の地下には凍土状となってかなりの水が存在すると考えられているし、火星面の岩石中からも水分が存在したことを示すと考えられるデータが検出された。なお、バイキング着陸地点での気温は零下30~零下80℃であった。
 バイキング以後も何度か火星探査は試みられた。アメリカは1996年、マーズ・パスファインダーを打ち上げ、同機は翌年、火星に着陸、ローバー(探査車)による地表観測などを行った。2003年にはマーズ・エクスプロレーション・ローバー2機(「スピリット」と「オポチュニティ」)を打ち上げ、2機とも翌2004年1月に火星に着陸、探査活動を開始した。
 NASAは同年3月、ローバーによる地質調査で、火星表面に一定期間、水が液体状で存在していたことを確認したと発表した。それまでも火星での水の存在を示唆(しさ)する観測データはあったが、地質調査で直接確認されたのはこれが初めてであった。火星に生命体が存在することを示すデータはこれまでのところ得られていないが、水の存在は生命に不可欠なため、この発見はその可能性を高めるものとしても注目された。[村山定男]

衛星

火星は二つの小さな衛星をもち、内側のフォボスは火星の表面からわずか6000キロメートルのところを0.319日(7時間39分)で公転している。これは火星の自転周期よりはるかに短いので、火星世界から見ると、西から出て東に没するように見える。外側のデイモスはフォボスの2倍余りの距離のところを1.262日(1日6時間18分)の周期で公転している。そのため東から昇るが西に没するまでに38時間を要する。フォボス、デイモスともに探査機の写真によって詳しく調べられた。二つの衛星は多くのクレーターに覆われた不規則な形をしているが、だいたいにおいてフォボスは長径が28キロメートル、デイモスは16キロメートルの回転楕円(だえん)体であることが判明した。この二つの小衛星は、太陽光の反射光の性質などがある種の小惑星に似ており、火星の引力にとらえられた小惑星である可能性が大きい。[村山定男]
『P・ムーア、C・クロス著、斉田博訳『火星』(1975・誠文堂新光社) ▽宮本正太郎著『火星――赤い惑星の正体』(1978・東海大学出版会) ▽P・レイバーン著、小池惇平監修『火星 解き明かされる赤い惑星の謎』(1997・日経ナショナルジオグラフィック社) ▽NASA協力、小尾信弥訳『火星 探査衛星写真』(2003・朝倉書店) ▽小森長生著『火星の驚異 赤い惑星の謎にせまる』(平凡社新書)』

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世界大百科事典内の火星の言及

【アンタレス】より

…さそり座のα星。ギリシアの軍神アレスArēs(ローマではマルスMars)が火星と結びつき,この星の色が赤いことや,火星がこの付近にやってくることから,ant‐Arēs(火星に対するもの)という名がついたのであろう。中国名は火(か),大火(たいか),火星などという。…

【風】より


【他の惑星の風】
 人工衛星の打上げが盛んになり,地球以外の惑星の大気のようすもしだいに解明されてきた。
[火星]
 火星は地球に比較して大気振動の大きい惑星である。地球上でも月の引力や太陽の放射熱によって起こされる大気潮汐があるが,火星ではダストによる熱潮汐が日々の天気を支配しているからである。…

【熒惑】より

…火星の古代中国名。五星の一つ。…

【スキャパレリ】より

… スキャパレリは望遠鏡による惑星面観測の大家としても著名である。77年に口径22cmの屈折望遠鏡で火星面を観測し,火星の地形を海や大陸に分類して火星図を作ったが,その際,火星面上を縦横に走る“カナル(運河)”が大きな話題となり,火星人のロマンにまで発展した。そのほかに水星面の斑点の観測から水星の自転周期を公転周期と同じ88日と発表した。…

【大気】より

…上空ほど気温は低く,100km上空では-60℃くらいである。火星の大気は二酸化炭素95.3%,窒素2.7%,アルゴン1.6%,酸素0.3%などから構成され,気温は約-100℃,気圧は約0.006気圧である。水分や二酸化炭素の大半は表面の土に吸収されている。…

※「火星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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