知恵蔵 「「無責任男」植木等逝く」の解説 「無責任男」植木等逝く クレージーキャッツのメンバーとして活躍すると同時に、映画の「無責任男」シリーズなどで人気のあった植木等が2007年3月27日に亡くなった。底抜けの明るさと要領の良さで世の中をスイスイ渡っていく植木等演ずる主人公は強烈であった。1960年代は、戦前の軍国主義から一変して経済成長に突き進んでいたが、「国民が一丸となってまじめに努力する」という精神主義では戦前と共通するものがあった。ただ、時として「まじめ」の精神は、目的のためにがむしゃらに突き進むことで自己を絶対化し、周りが見えなくなる危険性を有している。戦前の日本はその悪しき例である。そんな時代状況において、植木等が体現していた「無責任」や「いい加減さ」は、硬直した「まじめ」を相対化し、多様な生き方や価値観が存在することを提示していたのであり、それこそが植木等の隠れたメッセージであった。 (稲増龍夫 法政大学教授 / 2008年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by