無関心な人びと
むかんしんなひとびと
Gli indifferenti
現代イタリア文学を代表する作家モラービアの処女長編小説。作者が弱冠20歳のとき書き上げ、1929年、ミラノの小さな出版社から自費出版した。ローマのあるブルジョア家庭――だらしない母親と、出入りする愛人レーオの関係に象徴される偽善と腐敗、娘のカルラと弟のミケーレは、それに対する反発から、その清算と自立を願うが果たさず、やがて周囲の大人たちと同じ「無関心」に堕(お)ち、ミケーレによるレーオ狙撃(そげき)の空転、カルラとレーオの結婚によってこの「無関心」は完成する。ファシズム独裁体制下の社会にはびこる「無関心な人びと」を、突き放した簡潔な筆致で書き留めた同作は、イタリア文学史上空前の「事件」となったが、批判的リアリズムのもつ鋭い社会的告発のゆえにファッショ当局の関心を引き付け、第五版で没収、作者と当局は恒常的な対立関係に入った。世界文学史的には、サルトル、カミュらに先行する「実存主義文学」の傑作と評価されている。
[古賀弘人]
『河島英昭訳『無関心な人びと』(岩波文庫)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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世界大百科事典(旧版)内の無関心な人びとの言及
【ネオレアリズモ】より
…
【文学】
字義通りには〈新しいリアリズム〉を意味するイタリア語で,文学史的にはふつう,反ファシズム闘争を題材にした第2次大戦後のイタリア文学を総称していう。ただし,ファシズム政権に不従順な小説を発表したことから[モラビア]の《無関心な人びと》(1929)に,また,労働者の反権力意識の目ざめを描いたことからベルナーリCarlo Bernari(1909‐92)の《三人の工員》(1934)に,ネオレアリズモの起源を求めようとする批評家もいる。また戦後におびただしい数の反ファシズム闘争体験談が出版され,これらを一括してネオレアリズモと呼ぶ向きもある。…
【反ファシズム】より
…徹底した独裁体制のもとで,志ある作家は検閲→執筆禁止→逮捕・流刑もしくは亡命を余儀なくされた。そのような状況下で無名の作家[モラビア]の《無関心な人びと》(1929)はファシズム治下のブルジョアの生態を仮借なく描き出したため没収となり,またアルバーロが南部農民の貧困を見すえた《アスプロモンテの人びと》(1930)はネオレアリズモの地方主義の先駆をなした。ゴベッティの雑誌《バレッティ》の後を継ぐ《ソラーリアSolaria》誌に[ビットリーニ]が厳しい検閲をうけつつ《赤いカーネーション》を発表(1933‐36),ビットリーニは同時に[プラトリーニ],ビレンキとともにフィレンツェのファシズム機関誌《バルジェーロ》誌上で初期ファシズムの反ブルジョアの方向を強く主張した。…
※「無関心な人びと」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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