没収(読み)ぼっしゅう(英語表記)forfeiture; Einziehung

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

没収
ぼっしゅう
forfeiture; Einziehung

付加刑。犯人などから特定物件の所有権を剥奪して国庫に帰属させる司法処分。没収は付加刑であるから有罪判決において主刑を言い渡すときにだけ科することができる (刑法9) 。没収は,形式上は刑罰であるが,実質的には不当な利益を犯人に享受させず,社会にとって有害な物を除く保安処分としての性格ももっている。外国立法例のなかには保安処分として規定するもの (イタリア刑法 240,スイス刑法 58など) もあるが,日本の刑法は付加刑として取扱う。没収の対象となるのは犯人以外の者の所有に属さない犯罪組成物,犯罪行為に供しまたは供しようとした物,犯罪取得物,犯罪行為の報酬として得た物など (刑法 19) 。没収が不能なときには,一定金額の国庫納付を命ずる追徴処分がある (同条の2) 。なお賄賂罪については刑法 197条ノ5 (賄賂の没収,追徴) の特則がある。また,第三者没収については「刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法」がある。

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デジタル大辞泉の解説

ぼっ‐しゅう〔‐シウ〕【没収】

[名](スル)
強制的に取り上げること。
刑法上の付加刑。犯罪行為に関連した物の所有権を取り上げて国家の所有に移すこと。

もっ‐しゅ【収】

罰として、地位・土地・財産などを取り上げること。ぼっしゅう。もっしゅう。
「公請を停止し、所職を―せらる」〈平家・六〉

もっ‐しゅう〔‐シウ〕【没収】

もっしゅ(没収)」に同じ。〈運歩色葉

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百科事典マイペディアの解説

没収【ぼっしゅう】

刑法上の付加刑。主刑(刑罰)に付加してのみ科し得る(刑法9条)。没収し得るものは,犯罪行為を組成した物(偽造文書等),犯罪行為に供し,供しようとした物(凶器等),犯罪行為から得た物およびその物の対価として得た物。これらの物が犯人以外の者に属しないときのみ没収し得るが,犯人以外でもその情を知って取得した者に属する場合を含む(刑法19条)。
→関連項目押収財産刑未成年者飲酒禁止法

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世界大百科事典 第2版の解説

ぼっしゅう【没収】

犯罪を原因として,一定の物の所有権をもとの所有権者から奪い,これを国庫に帰属させる処分。古くは,犯人の全財産を没収することも広く行われていた。西洋では,全財産の没収は,すでにローマ法にあったといわれるが,とくに中世から近世にかけて広く行われた。日本でも,鎌倉・室町幕府に〈収公(じゆこう)〉,江戸幕府に〈闕所けつしよ)〉という家産没収があった。明治維新後も,1870年(明治3)までは〈財産籍没〉が認められていた。

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大辞林 第三版の解説

ぼっしゅう【没収】

( 名 ) スル
強制的に取り上げること。 「財産を-された」
刑法上の付加刑の一。犯罪に関連した物の所有権を国家に帰属させる財産刑。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

没収
ぼっしゅう

刑法上の用語としては刑罰の一種で、罰金、科料とともに財産刑の一つであるが、主刑を科す場合に、これに付加してのみ科することができる付加刑である(刑法9条)。没収が行われる理由は、主としてその物から生じる社会的危険を防止するためと、犯罪による利得を犯人に保持させないためであり、刑罰というよりも保安処分に近い。前者の理由から対象となるのが、犯罪行為を組成した物(たとえば、偽造文書行使罪における偽造文書)や、犯罪行為に供し、または供しようとした物(たとえば、殺人に用いられた凶器)であり、後者の理由から対象となるのが、犯罪行為から生じた物(たとえば、文書偽造罪における偽造文書)、犯罪行為によって得た物(たとえば、賭博(とばく)によって得た財物)、犯罪行為の報酬として得た物(たとえば、堕胎手術の謝礼として得た物)、それにこれらの物の対価として得た物(たとえば、それを売って得た代金)などである(同法19条1項)。没収できるのは原則としてその物が犯人以外の者に属さないときに限られるが、犯罪のあと犯人以外の者が情を知ってその物を取得したときは、犯人以外の者に属するときでも没収できる(同法19条2項)。前述の物につき、消費などによりその全部または一部を没収することが不可能なときは、その価額を追徴することができる(同法19条の2)。
 なお、関税法(脱税・密輸)、酒税法(密造など)にも没収・追徴の規定がある。また、物や保証金などを所有者から国庫に強制的に収めさせる処分は没取といい、没収とは区別される。さらに、捜査機関が裁判所の令状に基づいて証拠物または没収すべき物の占有を所有者から取得する行為は押収という。[大出良知]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ぼっ‐しゅう ‥シウ【没収】

〘名〙
① 財産や権利などを取り上げること。収没。もっしゅ。もっしゅう。〔新令字解(1868)〕
② 刑罰の一つ。犯罪行為に使用したり、犯罪行為によって得たりなどした物の所有権を犯人から強制的に奪って国家の所有に移すこと。刑法上の付加刑で、懲役や禁固などの刑を科する場合に限り、これと合わせて科することができる。〔刑法(明治四〇年)(1907)〕
③ =ぼっしゅ(没取)②〔未成年者飲酒禁止法(1922)〕

もっ‐しゅ【没収】

〘名〙 重罪を犯したり、主人の命令にそむいたりした際に、地位・土地・財産などを取り上げること。没取。ぼっしゅう。もっしゅう。
※櫟木文書‐永暦二年(1161)四月一日・千葉常胤申状案「然而猶義朝謀叛之故、自国衙没収候畢」
※高野本平家(13C前)六「南都の僧綱等闕官ぜられ公請を停止し、所職を没収(モッシュ)せらる」

もっ‐しゅう ‥シウ【没収】

〘名〙 =もっしゅ(没収)〔運歩色葉(1548)〕
※歌舞伎・霊験曾我籬(1809)六幕「右内どのは横死、元より石井家は没収(モッシウ)

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世界大百科事典内の没収の言及

【刑罰】より

…やがて,フランス刑法を範とした旧刑法(1870公布)は,きわめて多様な自由刑を認めたために,刑名も多くなった。死刑,徒刑,流刑,懲役,禁獄(以上,重罪の主刑),禁錮,罰金(以上,軽罪の主刑),拘留,科料(以上,違警罪の主刑),および,剝奪公権,停止公権,禁治産,監視,罰金,没収(以上,付加刑)がそれであった。現行刑法(1907公布)は,刑の種類をはるかに制限し,徒刑(とけい),流刑(いずれも,犯罪人を離島などの遠隔地に送致し,その地において有期または無期間滞在させる刑。…

【中世法】より

…家督相続に際して,数人の子のだれを家督に選ぶか,財産を分割譲与するに当たって,相続人の選定,相続分の多少をどうするか,すべては被相続人の意のままであって,女子を家督に選ぶことも,幕府に忠勤奉公する長男を財産相続からはずすことも,ほとんど被相続人の自由であった。 次に,法の内容に立ち入っていえば,家業を継がせる目的で養子を迎える場合には,律令の規定で禁じられた身分の者でもかまわないとか,同様の目的で迎えられた養子は,律令の規定に反して,養父の遺産を独占的に相続することができるなどは,家業継承を第一義として,律令法を積極的に廃棄した公家法の典型的な事例であり,女子が父から譲り受けた財産が婚姻によって婚家に流れることを防ぐために,女子に対する財産譲与に一期分(いちごぶん)(死去の後は実家の惣領に返還する)の条件を付けるとか,妻が夫と死別した後で他家に再婚する場合は,前夫から譲られた財産を持参してはならないなどの制限規定や,罪によって没収された所領について,被没収者の同族・子孫には,後日(ときには数十年から100年に及ぶ長年月の後)これの再給付(返還)を求める権利が留保されている(潜在的闕所(けつしよ)回復権)とする法慣習などは,家産の流出・減少を防ぎ,ときにはいったん流出したものの再取得をも可能にする武家法の具体例である。
[団体維持の理念]
 第2の団体維持の理念については,さきにも挙げた商品関係の座法,芸能関係の座法,地縁共同体の掟,宗門・僧団の制規などに明らかなように,中世社会では団体への帰属意識が強く,勢い,団体の成員と非成員との間に厳然たる身分の壁を設けて(ときには,その中間に准成員の身分を設けることもあったが,その場合も准成員は成員身分に近く,非成員との間の身分の壁は厚かった),成員の特権を守ることによってその団体を維持しようとする傾向が強かった。…

【妻】より

…【関口 裕子】
[中世]
 《御成敗式目》の11条には,妻がその里方から相伝した所領について,次のような規定が見えていた。すなわち,その夫になんらかの罪科があって所領の没収を受けるとき,妻妾の所領も同様な扱いを受けるかどうかという問題について,もし夫の起こした犯罪が,〈謀叛殺害幷山賊海賊夜討強盗等〉の重科であるときには,夫と同罪に扱われるが,夫の犯罪が軽罪のときには,妻の所領は没収されることはない,というのであった。とするならば,この規定から,妻の所領が夫からある程度独立した存在であったことが知られるであろう。…

※「没収」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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