焼付(読み)やきつける

精選版 日本国語大辞典 「焼付」の意味・読み・例文・類語

やき‐つ・ける【焼付】

〘他カ下一〙 やきつ・く 〘他カ下二〙
① 焼いて印をつける。焼印を捺(お)す。
※源平盛衰記(14C前)三八「金を以て頬(つら)を焼くに、波方とぞ焼付(ヤキツケ)たる」
② 焼いて付着させる。鍍金(めっき)をする。
※羅葡日辞書(1595)「Argentatus〈略〉またはギンバクヲ ヲシ、yaqitçuqetaru(ヤキツケタル)モノ」
陶器に絵や文字を描き、再び窯で焼いて定着させる。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉三「五色を焼伝(ヤキツク)る薬、并びに白色を発する薬を看(み)出して」
④ 写真で、印画紙ネガを重ね、光をあてて陽画をつくる。
ノリソダ騒動記(1952‐53)〈杉浦明平〉七「その写真を現像して三枚焼付けました」
⑤ うれしがらせをいってひきつける。遊里のことば
※評判記・野郎虫(1660)加川右近「いかなる大明神どのも此人にはこがね色にやきつけられ給ふべし」
⑥ はっきりと刻みつける。強い印象を与える。
※思ひ出す事など(1910‐11)〈夏目漱石一四稲妻を眸に焼(ヤ)き付(ツ)けるとは是だと思った」

やき‐つけ【焼付】

〘名〙
陶磁器の釉(うわぐすり)の表面に、着色顔料文様を描き、再び錦窯(きんがま)で焼いて付着させること。上絵付。
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉一「田の浦の陶場に、焼着(ヤキツケ)画窯(ゑがま)の良結果を奏するまで」
加熱による金属の表面加工の一つ。
※宗五大草紙(1528)衣装の事「太刀〈略〉めぬき、我家の紋を焼付にすべし」
③ 写真で、ネガと感光紙を重ねて光をあて、現像・定着をして陽画を作ること。プリント。
※郵便報知新聞‐明治一七年(1884)五月三一日「此三日天気の宜しからぬ為め焼付が出来ぬより」
④ めっきをすること。

やき‐つ・く【焼付】

[1] 〘自カ五(四)〙
① 焼けて跡などが付く。焼けてくっつく。こげつく。
古事記(712)上(兼永本訓)「即ち其の石に焼著(ヤキツキ)て死(みう)せぬ」
※マイ・カー(1961)〈星野芳郎〉二「放っておけば、あまりの高熱シリンダは焼きついてしまう」
② はっきりと刻まれる。強い印象を受ける。
草枕(1906)〈夏目漱石〉二「ああうつくしいと思った時に、其表情はぴしゃりと心のカメラへ焼き付いて仕舞った」
[2] 〘他カ下二〙 ⇒やきつける(焼付)

やけ‐つ・く【焼付】

〘自カ五(四)〙 炎などが燃えひろがってつく。燃えて付着する。
太平記(14C後)二一「此の細乾たる檜皮に焼付て、黒煙天を焦て焼け上る」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android