国指定史跡ガイド 「熊野磨崖仏〈大分県〉」の解説
くまのまがいぶつ【熊野磨崖仏〈大分県〉】
大分県豊後高田市平野・真中・上野にある石仏。指定名称は「熊野磨崖仏 附元宮磨崖仏及び鍋山磨崖仏(つけたりもとみやまがいぶつおよびなべやままがいぶつ)」。田染(たしぶ)地区南端の陽平(ひなたびら)の山中、六郷山寺院の一つである今熊野山胎蔵寺(たいぞうじ)から旧鎮守熊野神社にいたる参道の岩壁に刻まれた4体の磨崖仏。国東(くにさき)天台信仰を代表する遺跡で、1955年(昭和30)、元宮磨崖仏及び鍋山磨崖仏とあわせて、国の史跡に指定された。1996年(平成8)には、一部解除と追加指定があった。中心となる大日如来形像は高さ約6.8mの半身像。高さ約8mの龕(がん)の中央に彫り出されており、平安中期の作と推定。大日如来の向かって左に突き出した岩肌には、高さ約8mの不動明王像が刻まれ、その左右下方には高さ約3mの矜羯羅(こんがら)童子、制吁迦(せいたか)童子の痕跡が確認できる。いずれも鎌倉時代初期の彫造と推定されている。南北朝期の彫造と推定される元宮磨崖仏は元宮八幡の北隣の岩壁に、5体の立像が薄肉彫りされている。鍋山磨崖仏は高さ約2.3mの不動明王と両脇に2童子の三尊像が岩壁に刻まれており、鎌倉時代初期の制作と考えられている。JR日豊本線宇佐駅から車で約25分。