片陰(読み)カタカゲ

デジタル大辞泉 「片陰」の意味・読み・例文・類語

かた‐かげ【片陰】

陰になっている所。物陰
「高い用水桶の―から中を覗いて」〈秋声足迹
日陰。特に、夏の午後に家並みなどの片側にできる日陰。 夏》「―をもとめてすでに海の風/汀女

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「片陰」の意味・読み・例文・類語

かた‐かげ【片陰】

〘名〙
① 一方にかたよっている物陰。一方が物の陰になっている所。
蜻蛉(974頃)下「山ちかう河原かたかげなるところに」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉七「世話をする婆あさんを片蔭(カタカゲ)へ呼んで」
② 日光の当たらない所。日陰。また、夕方、日陰が広い範囲にできること。俳句では炎暑の午後の日陰をさして、季語として用いる。かたかげり。《季・夏》
※虎清本狂言・猿座頭(室町末‐近世初)「どこもとなりとも、かたかげのよささうな所にいたいの」
※炎昼(1938)〈山口誓子〉「片蔭に囚徒青竹を挽きゐたり」
③ 人の目のとどかないところ。かげ。かたすみ。
※仮名草子・清水物語(1638)上「君たる人めのまへのたちまはりだによければ、かたかけにては牛馬のくびをきり、おや子知音(ちいん)の物をぬすみ」
[補注]②が季語として意識され始めたのは、大正以後、高浜虚子以後とされる。それまでの「夏陰」に代わって、「片陰」「片かげり」が季語として多く用いられるようになった。

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