日本大百科全書(ニッポニカ) 「物資総動員計画」の意味・わかりやすい解説
物資総動員計画
ぶっしそうどういんけいかく
総力戦遂行に必要な物資の需給計画。略称「物動計画」、別称「物(もの)の予算」。第一次世界大戦後、軍部の主導で軍需動員の研究が始まり、1927年(昭和2)設置の内閣資源局が具体案を作成してきた。実施された計画は、日中戦争の長期化と国際収支の悪化に対応して、38年以後企画院が、43年からは軍需省が作成した。計画は、金属、石炭、石油、機械、食糧を中心とする100種以上の物資について、年間総供給量(国内生産+(プラス)在庫+回収+円ブロック輸入+第三国輸入)を推定し、これを軍官需、生産力拡充用、輸出用、一般民需に割り当てるものであった。しかし、日本は生産力が低かったので円ブロック内で自給体制を確立できなかったため、太平洋戦争前は第三国輸入が、以後は植民地・占領地からの収奪物資の海上輸送量が、実質的な基礎となった。したがって、国際関係と戦況の悪化により目標達成率は低下するばかりで、もっぱら一般民需が物資欠乏と軍需急増の犠牲にされた。
[疋田康行]
『中村隆英・原朗編『現代史資料43 国家総動員 一』(1970・みすず書房)』▽『防衛庁編『陸軍軍需動員2 実施編』(1970・朝雲新聞社)』▽『田中申一著『日本戦争経済秘史』(1975・コンピュータ・エージ社)』