日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定物債権」の意味・わかりやすい解説
特定物債権
とくていぶつさいけん
特定物の引渡しを目的とする債権である。特定物の引渡しとは、具体的に確定している物の占有を移転することをいい、所有権とともにこれを移転する場合をも含む。贈与、売買、交換などの契約において、多く生ずるところの債権である。特定物債権の債務者は、引渡しをするまでは善良な管理者の注意をもって、その物を保管しなければならないが(民法400条)、引渡しに際しては、債務者は、そのときの現状で引き渡せばよいものとされている(同法483条)。たとえば、債権発生のときから引渡しまでの間に物が壊れたとしても、壊れたままの状態で引き渡せばよく、修繕する義務はないが、実際は損害賠償責任を負う場合もある。なお、履行場所については、別段の意思表示のない場合は、債権発生当時にその物の存在した所である(同法484条)。
[竹内俊雄]