けい‐やく【契約】
〘名〙
※古事談(1212‐15頃)二「於レ今者如二契約一可レ被レ譲二摂籙於左府一」
※
曾我物語(南北朝頃)一「われ、
杵臼(しょきう)にけいやくして、命を君にすつること、遅速をあらそ
ひしなり」 〔魏書‐鹿

伝〕
※民法(明治二九年)(1896)五二一条「契約の申込は之を取消すことを得ず」
※
旧約全書(1888)創世記「地にをる者は皆死ぬべし。然れど汝とは我わが契約
(ケイヤク)をたてん」
※
洒落本・交代盤栄記(1754)「
難波〈略〉とりわき近き頃は日にまし御さかんの御事おのおのちかう寄りて御けいやくけいやく」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「契約」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
契約
けいやく
berîth; testamentum
ユダヤ教,キリスト教において,神が人と結ぶ約束の意味に用いられる。契約の思想は古くからあり,古代近東では権利義務を伴う相互依属的関係を意味していた。これに対して神が人と結ぶ契約は神の一方的な所与である点で相違があるが,それによって義務が生じる点は同一である。これは「私がイスラエルの家に立てる契約はこれである。すなわち私は私の律法を彼らの内におき,その心に記す。私は彼らの神となり,彼らは私の民となる」 (エレミヤ書 31・33) という主の言葉で定式化される。歴史的にはすでにモーセの時代にイスラエル宗教が契約宗教として出発しており,国家滅亡などのさまざまな民族的苦難はイスラエル民族側の契約の不履行によるとされた。また『イザヤ書』 42章6,49章8においては新しい契約の仲介者の出現が預言されており,キリスト教ではのちのイエスこそその仲介者とみなされた。キリスト教の契約はユダヤ教とは異なり,特定民族をこえた全人類と神との契約である。
契約
けいやく
contract
私法上,意思表示の合致 (合意) によって成立する法津行為をいう。通常は申込みと承諾によって成立する。少くとも2個の意思表示の存在を必要とする点で,単独行為と異なり,また意思表示が相対立している点で,同一方向に向けられている社団法人設立行為などの合同行為と異なる。契約には,典型契約と非典型契約,双務契約と片務契約,有償契約と無償契約,諾成契約と要物契約,物権契約と債権契約などのさまざまな分類が行われている。近代法は契約自由の原則に立つので,社会生活は主として契約によって処理される。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
けいやく【契約 contract】
契約とは,互いに対立する複数の行為主体の意思表示の一致(合意)によって成立する行為である。法律的には後述のように債権・債務関係が発生することを意味する。
[契約行為と社会関係]
イギリスの歴史法学者H.J.S.メーンは《古代法》(1861)において〈身分から契約へ〉という社会進化の図式を提示し,父権制社会の中で身分的に拘束されていた人間が解放される過程をえがいた。このメーンの書物のドイツ語版(1880)に影響を受けたドイツの社会学者F.テンニースは《ゲマインシャフトとゲゼルシャフト》(1887)において,法律的行為としての契約が合理的な法律関係の特質を示すと同時に,あらゆる合理的な社会関係の表現でもあることを説いた。
けいやく【契約 covenant】
ここでのべる〈契約〉という概念は,今日法律の分野で用いられるものと区別され,聖書的世界にさかのぼる古い宗教的概念である。聖書は旧約と新約と2書あるが,〈約〉というのは契約の〈約〉であって,それが示すように聖書的宗教の中心概念となっている。旧約聖書において契約(ベリース)という語は285回用いられてイスラエル宗教の骨格を形づくっている。ヘブライ語の〈ベリースberîṯ〉はアッカド語のbarû(縛る)の名詞形birîtu(束縛)と関係があると推測され,元来一定の約束のもとに個人または集団が相互に拘束関係に入ることを意味している。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
普及版 字通
「契約」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典内の契約の言及
【押書】より
…契約状の一種。〈あそ〉〈あっそ〉〈あしょ〉とも読む。…
【債権譲渡】より
…たとえば,AがBに金銭を貸し,3年後に返済してもらうと契約したとする。この場合A(債権者)がB(債務者)に対する金銭の返還を求める債権を行使しうるのは3年後である。…
【日本社会論】より
… シューの見解に従えば,日本の〈原組織〉イエモトの編成・運用原理は,それの複合的な性格を反映した〈縁約の原理kintract principle〉ということになる。それは,中国の〈原組織〉である〈族(ツウ)〉における〈親族の原理kinship principle〉と,欧米の〈原組織〉であるクラブ(自由結社)の〈契約の原理contract principle〉との折衷であって,血縁集団におけるような,固定化されたヒエラルヒー的秩序への自動的な全面参加と,自由結社への義務づけられた限定参加との接合化された形態を指している。日本人がみずからの自発的意思に基づいてイエモトに加われば,その擬似親族組織に対して,自発的に,また無限定的に忠誠を尽くすことになることをいうのである。…
【法律行為】より
…このことから,〈法律行為自由の原則〉が支配することになる。具体的には,法律行為の一類型である〈契約自由の原則〉や遺言の自由,法人設立の自由などとなって現れる。
[法律行為における意思]
法律行為の効力は,意思が存在しない場合(心裡(しんり)留保,錯誤,虚偽表示の場合)には無効,意思に瑕疵(かし)ある場合(詐欺,強迫の場合)には取消可能,意思が完全である場合には有効,意思が合致すると契約の効力が生ずるというように意思との関連で統一的に決定されるよう体系づけられている。…
※「契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報