精選版 日本国語大辞典 「所有権」の意味・読み・例文・類語
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物を自由に使用・収益・処分できる物権(民法206条)。所有権以外の物権が、土地を耕作するとか、競売をして債権の弁済にあてるとか、一定の目的で一定の範囲においてしか物を支配しない権利(制限物権)であるのに対して、所有権は物を全面的に支配する権利である。物権のなかでもっとも強力な権利であり、私有財産制度の中核をなす。所有者は、目的物を自ら使用することができるほか、対価を得て他人に利用させることも、担保に入れることも自由である。後の二つの場合には、所有権の行使が制限されることになるが、この制限は一時的なものにすぎず、いずれはもとの完全な姿に戻るべきものと考えられている(これを所有権の弾力性という)。また、所有権は、これを行使しなくても、他の権利のように時効によって消滅しないものとされている(これを所有権の永久性という)。しかし、このような所有権の観念は、歴史の過程のなかにおいてつくられたものであり、古今を通じて不変のものであるわけではない。封建制度の時代には、物とくに土地について、ある人の全面的な支配権が認められることはほとんどなく、あるいは領主や貴族のさまざまな特権によって拘束を受け、あるいは共同体の規制によって制限されていた。それらの制限拘束が撤廃され、自由な所有権が確立したのは近代になってからである。フランスの人権宣言(1789)では、所有権は「不可侵にして神聖な」権利として市民の基本的な権利の一つと考えられた。このように所有権を絶対的なものとする考え方は、当時発展しつつあった資本主義経済の要請にもこたえるものであった。しかし、資本主義経済が進み、社会的な諸矛盾が発生すると、所有権の絶対性にも疑問がもたれてきた。今日では、所有権といえども無制約の天賦人権の一つなのではなく、社会的目的によって内容を規定され、その行使が限界づけられる権利にすぎないと解されている。
日本の憲法においても、所有権は強く保障されているが(29条1項・3項)、その内容は公共の福祉に従うものとして制限されているし(29条2項)、民法でも、所有権の行使は法令の制限に服するものとされている(206条)。そのほか、所有者が所有権をその社会的目的に反して行使するような場合には、権利の濫用として違法となることもあり(民法1条3項)、文化財保護・産業育成・都市計画・公共事業などの目的のために、私人の所有権を制約する立法もしだいに多くなりつつある。
なお、所有権が所有権者以外の者によって侵害され、あるいは侵害されそうな場合には、所有権に基づくいろいろな請求権によって救済される。
[高橋康之・野澤正充]
所有権を取得する態様には、時効取得・無主物先占・添付(てんぷ)のように他人の権利に基づかないで取得する原始取得と、売買・贈与などの契約により、あるいは相続によるなど、他人の権利を承継する承継取得の二つがある。日常われわれが所有権を取得するのは、後者による場合が多い。わが国では、契約によって所有権を移転する場合には、所有権移転の意思表示だけで足り、登記などの方式は、所有権の移転を第三者に対抗する手段にすぎないとされている(民法176条~178条)。相続の場合には、被相続人の財産は被相続人の死亡と同時に相続人に移転する(同法882条・896条)。なお、相続人が複数のときは共有となる(同法898条)。
[高橋康之・野澤正充]
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… このように,知行は中世の所有法体系にとって中核的意味をもったので,これまで法制史学上,その法的性質をめぐって論争がくりひろげられてきた。この時代には,近代法にあるような抽象的な所有権の観念がなく,ひとびとは〈○○職が何某の所有権に属する〉とか〈○○職について何某が所有権をもっている〉とかいういい方はせず,〈何某が○○職を知行する〉〈何某が知行する○○職〉と表現した。ある職の帰属をめぐって,現実の知行者=〈当知行〉者(A)と取り戻そうとする者=〈不知行〉者(B)との間に紛争が起きたとき,Bは〈Aの知行には由緒がなく,自分に知行すべき由緒がある〉という趣旨の請求をし,Aは〈自分の知行には由緒がある〉と反論して争い,裁判所は〈A(またはB)が知行すべきである〉という判決を下すのが一般的であった(年紀法)。…
※「所有権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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