犢子部(読み)とくしぶ(その他表記)Vātsīputrīya

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「犢子部」の意味・わかりやすい解説

犢子部
とくしぶ
Vātsīputrīya

釈尊没後 300年頃に分れた,部派仏教一派。跋私弗底梨与とも書く。上座部系統の説一切有部から分れたもので,この派の特徴は,輪廻主体として人格的主体 (補特伽羅) を想定したことである。この補特伽羅説は,五蘊説と輪廻説とを調和させるために立てられたものと考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の犢子部の言及

【上座部】より

… 根本上座部は《異部宗輪論》によれば雪山(せつせん)部(ハイマバタHaimavata)とも呼ばれたという。上座部の教義は明らかではないが,その後200年してこの部派はさらに分裂を繰り返し,その中の犢子(とくし)部,化地(けじ)部,説一切有(せついつさいう)部,法蔵部,経量部などは精緻にして特色あるアビダルマ(論蔵)を構成して,部派仏教(小乗仏教)の展開に大きく貢献し,仏教思想全体に多大な影響を与えた。大衆部【加藤 純章】。…

【小乗仏教】より

…小乗仏教の思想は釈迦とその直弟子たちの初期仏教と,後の大乗仏教を理解する上にも重要である。 小乗仏教の中で特に重要な部派は,大衆(だいしゆ)部説一切有(せついつさいう)部,犢子(とくし)部,化地(けち)部,法蔵部,経量(きようりよう)部などであるが,現存資料としてはスリランカ上座部の伝持するパーリ語で書かれた論蔵と,漢訳に伝わる説一切有部のものがほぼすべてであり,他部派の論蔵はきわめて少ない。 小乗仏教の教理の特徴は,釈迦の教えをいかに正確に理解し整備するかという点にある。…

※「犢子部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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