日本大百科全書(ニッポニカ) 「犬守り」の意味・わかりやすい解説
犬守り
いぬまもり
奈良市法華寺(ほっけじ)から授与される泥製手ひねりの小犬。粘土に雲母(うんも)を混ぜてつくった胡粉(ごふん)塗りの白犬で、大、中、小の3種がある。大(左右5.5センチメートル)は胴体に菊に山の字、中(2.3センチメートル)は若松に朱の5点、小(1センチメートル)は朱の5点が描かれ、いずれも赤糸の首輪を結ぶ。同寺は奈良時代光明(こうみょう)皇后を開基とする尼寺で、同皇后が国家安泰、万民豊楽の祈願の際、加持祈祷(かじきとう)の清浄灰土で犬型の御守りをつくらせ、悪病災難を除き安産の守りに授けたのが始まりとされる。縁結びのまじないにもされる。現在も尼僧がつくっており、中型の犬が1970年(昭和45)の年賀切手図案となった。
[斎藤良輔]