「法隆寺資財帳」や「延喜式」に、「雌黄、烟子、丹、緑青」といった顔料とともに載るが、これは、鉛白及び粉錫を指すと考えられる。古墳壁画や諸寺の遺物における白色は、白土か鉛白によるものであり、「胡粉」が貝殻粉(炭酸カルシウム)を指すようになるのは、鉛白が雌黄のような硫黄分を含む顔料との併用で黒ずむという欠点のために、中世以降、貝殻粉の使用が一般化したことによる。
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東洋画の白色顔料の一種。貝殻を焼いて粉末にしたもので、炭酸カルシウムを主成分とする。絵の地塗りや建築物の彩色に多く用いられ、また桃山時代の障屏画(しょうへいが)などでは、桜や菊などを胡粉の盛り上げ彩色で効果的に表現している。ただし材質上剥落(はくらく)しやすく、胡粉で彩色された作品は取扱いに注意が肝要。胡粉の語は、すでに早く奈良時代の文献にみえるが、実際に胡粉が顔料として使われるようになるのは室町時代以後のことで、それ以前は白土などが用いられた。これを含めて白色顔料を胡粉ということもある。また他の顔料に胡粉を混ぜたものを、具墨(ぐずみ)、朱(しゅ)の具、具まじりと称すように、具とよぶ。
[榊原 悟]
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… これらの岩絵具のほかに,赤色にはラックカイガラムシから色素を抽出したえんじ(臙脂),黄色にはガンボジ(海籐樹)の樹脂液から得る籐黄(とうおう)があり,青色には植物染料の藍を顔料として用いる。白色にはハマグリやカキの貝殻を焼いて作った蛤粉(ごふん)(胡粉)があり,主成分は炭酸カルシウムで,近世以降現代まで日本画で多用されている。また黒色には墨を用いる。…
…天然には,方解石,氷州石,アラゴナイト(アラレ石),石灰岩,大理石,チョーク(白亜)などとして多量に産出する。また,貝殻の主成分は炭酸カルシウムであり,これを微粉砕したものは胡粉(ごふん)と呼ばれ,白色顔料となる。実験室では,カルシウム塩の水溶液に炭酸アルカリ水溶液を加えると,白色の沈殿(沈降炭酸カルシウム)として得られる。…
※「胡粉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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