国指定史跡ガイド 「珠洲陶器窯跡」の解説
すずとうきかまあと【珠洲陶器窯跡】
石川県珠洲市宝立町ほかにある中世陶器の窯跡。能登半島の先端丘陵上に位置し、東西約15km、南北約20kmの範囲内に、計40基以上の窯跡が点在している。珠洲焼は須恵器(すえき)系の中世陶器で、近世以降生産が途絶したが、窯は12世紀後半から15世紀末ごろまで継続し、製品は北陸から北海道にいたる日本海側沿岸地域に広く供給された。窯の構造は基本的には単房の地上式窖窯(あながま)で、製品は還元焔焼成で灰色を呈し、器種は壺・甕(かめ)・すり鉢の3種が大半を占める。製作技法は、粘土紐巻き上げののち叩き締め・ナデで成形し、刻文・刻印・櫛目文のほか秋草文など豊富な文様がある。日本海域に流通した大規模窯であり、この地域の陶器生産と流通の実態や生活、信仰、社会、経済のあり方を知るうえで欠くことのできない遺跡であることから、2008年(平成20)に国の史跡に指定された。窯跡の大半は能登最大の荘園である若山荘の荘域にあり、その関与が推定されている。能登空港から車で約40分。