日本大百科全書(ニッポニカ) 「すり鉢」の意味・わかりやすい解説
すり鉢
すりばち
食物をすりつぶすための調理器具。口径の広いじょうご型の陶器で、内側につけられた刻み目に、食物をすりこぎですりつけてつぶす。団子などを手軽につくるときにも、すりこぎで搗(つ)いて用いられる。
すり鉢に似たものは平安時代以前からあったが、そのころのものにはまだ刻み目がなく、鎌倉時代になって初めて刻み目がつけられるようになった。しかし初期のすり鉢には刻み目が少なかった。時代とともに目が密にはなってきたが、現在のように全面に細かく入るようになったのは江戸時代になってからであるといわれている。
すり鉢は昔から備前(びぜん)(岡山県)のものが、堅くて割れにくく、目も摩滅しにくいのでよいとされてきた。別名、当たり鉢ともいう。
すり鉢は各種料理に用いられるが、自家製の粒みそを用いていた昔は、みそすりに欠かせないものであった。また、ごま和(あ)え、白和え、とろろ汁、木の芽和えなど、すり鉢があってこそ本当のおいしさの出る料理も多くある。
新しいすり鉢は、刻み目の中に土が入っていたり、刻み目の角が立ちすぎていて、そのまま使うと目がこぼれたりする。そこで、刻み目の掃除、角をすこし丸くする意味で、使い始めは、キャベツやダイコンの葉の粗切りを入れてするとよい。使い込んだすり鉢は、刻み目が丸くなってすりぐあいが緩くなるが、かえってきめの細かい、口あたりのよいものができるので、たいせつにされる。
[河野友美]