珠洲焼(読み)すずやき

共同通信ニュース用語解説 「珠洲焼」の解説

珠洲焼

石川県珠洲市に伝わる焼き物で、県の伝統的工芸品に指定されている。酸素を抑え、鉄分を多く含む珠洲の土を1200度以上の高温焼き上げることで「黒灰色」と呼ばれる色に仕上がる。市によると、平安時代末期から生産され、一時は日本列島の4分の1が商圏となった時期もあったが、15世紀に姿を消した。戦後窯跡発掘調査が行われ、地元作家らが生産技法を研究。1979年から再びつくられるようになった。現在、職人は約50人。

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改訂新版 世界大百科事典 「珠洲焼」の意味・わかりやすい解説

珠洲焼 (すずやき)

石川県能登半島の先端,珠洲市を中心に,南北約26km,東西約3kmの地域で焼かれた中世須恵器系の陶器。窯跡は現在まだ9地点12基しか発見されていないが,各地出土の製品の量からみて,かなり大規模な窯業地であろう。製品は壺,甕(かめ),擂鉢(すりばち)の3器種を主体とし,初期には粗雑な碗や花瓶瓶子(へいじ),浄瓶(じようへい)などの仏器類を併せ焼いている。成形は粘土紐巻上げづくりで,底は板おこしと静止糸切りの2方法がある。胴は条線状叩具(こうぐ)で整形しているが,精製品はそれをへらで削って平滑な面に櫛描きによる豊富な文様を施している。肩には印花文を施す例が多い。鎌倉中期から南北朝期にかけて四季草樹文系の文様を描いた壺類が,また室町中期にかけて縦耳の両端を跳ねた特色ある四耳壺が焼かれている。その地理的位置から珠洲焼の商圏はきわめて広く,岐阜県北部から日本海沿岸をおおい,北は北海道南西部に及んでいる。室町中期ごろ廃絶した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「珠洲焼」の意味・わかりやすい解説

珠洲焼
すずやき

平安時代末期から室町時代中頃にかけて石川県珠洲市上戸町,宝立町を中心とした地方で焼かれた陶器。須恵器系統の流れをくむもので,庶民の日常雑器を焼き,なかでも大甕,片口鉢,水瓶が多いが,器形に地方的な特色がある。文様は櫛がきの波状文がおもで,釉 (うわぐすり) を用いず簡素で実用的なものを量産した。室町時代中頃に加賀古窯や越前窯に押されて廃絶した。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「珠洲焼」の解説

珠洲焼[陶磁]
すずやき

北陸甲信越地方、石川県の地域ブランド。
珠洲市で製作されている。珠洲では平安後期から室町時代に無釉の焼締黒陶が焼かれていたが、長く途絶えていた。1976(昭和51)年に再興。釉薬を使わず、穴窯で焼き締める昔ながらの技法を受け継ぐ。珠洲の土には鉄分が多く含まれ、高温焼成すると薪の灰が溶けて渋い黒灰色になる。石川県伝統的工芸品。

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デジタル大辞泉プラス 「珠洲焼」の解説

珠洲焼

石川県珠洲市を中心に生産される焼き物。平安時代後期から室町時代にかけて同地域で焼かれていたがその後途絶していた焼き物を、1976年、市や商工会議所が中心となって復興したもの。釉薬を使わずに穴窯で焼き締める須恵器系の焼き物。同地の土には鉄分が多いため、黒灰色に仕上がるのが特徴。石川県指定伝統的工芸品。

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世界大百科事典(旧版)内の珠洲焼の言及

【能登国】より

…能登における荘園の成立は12世紀中葉の鳥羽院政期に多く知られ,奥能登や口能登南部で若山荘(公田数500町),町野荘(公田数200町),大屋荘(公田数197町余),大泉荘(公田数200町)の大規模な荘園が確認できる一方で,国衙周辺の鹿島郡(古代の能登郡が改称)付近では,小規模な国衙領が集中しているのがわかる。また珠洲郡の若山荘周辺では12世紀後葉以降,須恵(すえ)質の中世陶器(珠洲焼)の生産がはかられており,日本海海運によって北東日本海沿岸の各地へ流通していた。
[題目と禅と念仏]
 鎌倉後期の能登国では,石動(いするぎ)山の修験道信仰などが主潮をなしていたが,やがて鎌倉新仏教の伝播もはかられた。…

【若山荘】より

…日野家の荘経営は,在地武士の本庄,松波氏らを荘官に登用して被官化して成果を上げたが,室町時代に至り守護請が成立し,守護代遊佐氏の勢力が浸透するとしだいに不知行化していった。荘内を中心に生産された中世古陶(珠洲焼)は広く北東日本海域に流通したが,その窯跡は約20基確認されている。【東四柳 史明】。…

※「珠洲焼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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