現代の精神的状況(読み)げんだいのせいしんてきじょうきょう(英語表記)Die geistige Situation der Zeit

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

現代の精神的状況
げんだいのせいしんてきじょうきょう
Die geistige Situation der Zeit

ドイツの実存哲学者ヤスパースの著書。1931年刊。200ページに満たない文庫本であるが、ヤスパースはこの小著のなかで、第二次世界大戦前のナチス台頭に至る時代の「精神的状況」を克明に描いている。その内容は国家から家庭生活にまで及び、集団、技術、政治、教育、スポーツといったあらゆる問題が精神的状況との関連で語られている。ヤスパースが当時の精神的状況を支配する時代意識とみるのは、不安、喪失、虚無、絶望、危機、混迷といった意識であって、それはひとことでいえば、ニヒリズムの意識である。ヤスパースはこの著書のなかで、「それでは今日なお何が存在するかという問いに対しては、徹底した危機の意識としての危険と喪失の意識がある、と答えるべきであろう」と述べている。同年に主著『哲学』3巻を公刊したが、この小著は、彼の実存哲学の成立基盤を知るうえでも重要である。[宇都宮芳明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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