精選版 日本国語大辞典「虚無」の解説
きょ‐む【虚無】
〘名〙 (古くは「きょぶ」か。→きょぶ)
① 何もなくむなしいこと。空虚であること。空(くう)。皆無(かいむ)。
※神皇正統記(1339‐43)上「其の末を学びて源を明めざれば、ことにのぞみて覚えざる過(あやまち)あり。其源と云ふは、心に一物をたくはへざるを云ふ。しかも虚無の中に留るべからず」
② 心にわだかまりがないこと。何物にもとらわれず虚心であること。
※全九集(1566頃)一「神を養ふとは〈略〉諸事をすてて恬澹虚無にして、真をまったうするをいふなり」 〔荘子‐刻意〕
③ (何もないの意から) はてしなく広がる大空。空中。虚空(こくう)。
※文華秀麗集(818)下・江上船〈嵯峨天皇〉「一道長江通二千里一。漫々流水漾二行船一。風帆遠没虚無裡。疑是仙査欲上レ天」 〔司馬相如‐大人賦〕
※史記抄(1477)一一「老子の道徳を散じて、思のままに論じて簡要は、老子の虚無自然に帰したぞ」 〔史記‐太史公自序〕
⑤ 世の中の真理や価値、また、人間存在そのものを、空虚で無意味なものと考えること。
⑥ ⇒こむ(虚無)
きょ‐ぶ【虚無】
〘名〙 (「ぶ」は「無」の漢音)
① =きょむ(虚無)①
※色葉字類抄(1177‐81)「虚無 キョブ」
② =きょむ(虚無)②
③ =きょむ(虚無)③
④ =きょむ(虚無)④
※米沢本沙石集(1283)一〇末「礼義等の才覚を習へば、妄心日々にまし、虚無(キョブ)の大道を行へば、妄念日々に損ずと云へり」
こ‐む【虚無】
※教行信証(1224)五「又解脱者名曰二虚无一。虚无即是解脱」
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