日本大百科全書(ニッポニカ) 「環状付加」の意味・わかりやすい解説
環状付加
かんじょうふか
cycloaddition
複数分子が付加して環状化合物(環式化合物)を生成する反応で、付加環化ともいう。
形式的には、孤立した炭素‐炭素二重結合(C=C、モノエン)や共役二重結合系(C=C-C=C、ジエン)の関係する4n+2型および4n型付加環化反応が知られている。反応機構的には、1段階で反応が進行し、反応物から安定な中間体を経由しないで一気に付加生成物を与える協奏的付加反応と、反応物からいったん中間体が生成し、この中間体から生成物ができる段階的付加反応に分類される。
ディールス‐アルダー反応( 、ジエン合成ともいう)は協奏的付加の代表例で、4π(パイ)電子系のジエンと2π電子系の親ジエン試薬とが両端で同時に結合して協奏的に6員環生成物を与える。これに対して、モノエンの二量化( )やオキセタンの生成は段階的付加の例で、光反応によりおこる。
このほか、モノエンに対するカルベン(メチレンまたは置換メチレンに相当する2価の反応活性種)の付加( )や、1,3-双極子反応種の付加による5員環の生成反応( )も重要な環状付加反応である。
[向井利夫・廣田 穰]